国民一人1700円の善意 義援金2200億円、県が配分終了

編集委員・石橋英昭
[PR]

 宮城県はこのほど、東日本大震災の被災者向けに国内外から寄せられた義援金の最終配分を決めた。累計で約2200億円に上り、自宅が全壊した世帯には最大で156万円が贈られた(市町村受け付け分を除く)。公助に限界がある中、義援金という共助が、ひとりひとりの立ち直りに大きな助けとなった。

 震災での義援金は、日本赤十字社、中央共同募金会など民間団体や日本政府、被災自治体がそれぞれ受け付けた。厚生労働省に事務局を置く配分委員会がおおまかな基準を示し、被災各県に配分。義援金の集まり具合や被災の実情に応じて段階的に額を決め、県から市町村を通じて被災者に振り込む仕組みだ。

 県によると、全国分と県受け付け分を合わせた総額は2173億円。宮城の被災者のため、国民1人あたり1700円の善意を寄せてくれた計算だ。県内で住宅が全半壊した21万世帯で割ると、平均受取額は約100万円になる。

 ちなみにこの義援金総額は、県分の被災者生活再建支援金(公助)2180億円とほぼ並び、地震保険の支払額(自助)5600億円の4割に達する。

 県はのべ14回にわたり義援金を配分。2011年中に累計額の4分の3が集まり、その後も額は減りながら寄付は続いた。最終的な配分基準は▽津波全壊世帯に156万円▽死亡者遺族に124万円▽震災孤児にさらに50万円▽災害で負傷した人に29万円など。

 七ケ宿町を除く34市町村に配分され、最多は仙台市の約870億円、次いで石巻市約500億円。市町村は独自受け付け分を加えて調整し、被災者に最後の振り込みをする段取りだ。

 日赤が昨年3月末で募金を終えたことを受け、県も「復興の区切り」として終了を決めた。岩手、福島両県と政府は、今年3月末まで受け付けを続けている。

     ◇

 震災以降も大災害が多発する中、災害義援金の意義や課題は何か、兵庫県立大の青田良介教授に聞いた。

     ◇

 私有財産には公費を投入できず、住宅被害の回復は自助努力で、というのが国の原則だ。その中で、義援金は個人の再建に大きな役割を担ってきた。

 だが任意の寄付ゆえ、いくら集まるか予想できないという問題がある。集まり具合をみながら配分を決めざるを得ず、迅速に被災者に届けることが難しい。

 また、災害によって集まり方は様々で、個々の配分額に大きな格差が生じている(表)。メディアの報じ方の影響もあるだろう。全半壊世帯数で割った場合、雲仙普賢岳噴火災害では3千万円を超えたが、東日本大震災は100万円弱、阪神・淡路大震災はわずか40万円。通常は義援金を都道府県単位で集めるため、同時期の災害でも地域差が生まれうる。被災者は不公平に感じるだろう。

 寄付者の承諾を前提に義援金の一部をプールし、将来の災害にまわしたり、地域間で融通したりすることを検討できないか。被災後すぐに義援金を届けることができるし、少しでも格差を減らせる。

 震災があった2011年は「寄付元年」とされる。クラウドファンディング、支援対象を特定したものなど、災害時の寄付の形も多様になってきている。

 義援金は誰でも、いつでも、いくらでも寄付できる半面、誰にどう届いたか見えないという声もある。寄付者と被災地とがお互い顔の見える関係になれる仕組みを考えてはどうか。日本の寄付文化のさらなる成熟につながる。(編集委員・石橋英昭

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら