コロナ下でがん患者が感じる不安、怒り、悲しみ 対処の方法は?

有料記事がんとともに

構成・中島耕太郎
[PR]

 コロナ下でがん患者がさまざまな不安に心を悩ませています。いったいどう対処したらいいのか、がん研有明病院の清水研・腫瘍(しゅよう)精神科部長は、「不安にとらわれないための工夫」が大切だと話します。

    ◇

 気がついてみれば、新型コロナウイルス感染症の流行が始まって、2年が経っています。

 私もこの間、いろいろな患者さんと話をして、いろいろなことを感じてきました。

 きょうはそういうことを踏まえて、「コロナ下におけるがんと心のケア」についてお話ししていきたいと思います。

「人混みで命の危険を感じる」

 水戸部ゆうこさんは小学生と中学生の2人のお子さんがいる主婦で、進行した肺がんという診断を受けられて、3年が経っている方です。

 がんの告知を受けた直後は、「進行した肺がん」「もうがんが治らない」という衝撃から大きく落ち込みました。

 しかし、幸い抗がん剤の治療で病気の進行を抑えられて、少し時間が経ってからは家族とは幸せな毎日が戻ってきた状況でした。

 定期的に抗がん剤の治療を受けなければいけなくて、治療を受けた後、数日はぐったりしている。

 でも、その後はご家族と楽しく過ごす時間もあって、がん治療の進歩の恩恵を受けていると心から実感しているということでした。

 ただ、コロナ下で水戸部さんのストレスはいろいろと大きくなって、気持ちが落ち込む日も増えたそうです。

 以前から抗がん剤治療が効かなくなって、「がんが進行したらどうしよう」という不安はあったのですが、コロナ下でその不安ははるかに大きく増幅したそうです。

 がんの診断を受けた経験がある岡江久美子さんが亡くなりました。これは水戸部さんにとっても非常に大きなニュースでした。

 がんを体験した人は皆さん心配されたのではないかと思いますが、「がん患者がコロナに罹患(りかん)したら命にかかわるんじゃないか」という懸念があって、それは今も頭の隅にあるそうです。

 またコロナに罹患したら、その後しばらくコロナの治療をしなければいけないわけです。

 今せっかく自分に合った抗がん剤があるのに、それを中断しなければならない。

 そうすると、その間にまたがんが息を吹き返してきてしまうのではないかという心配も重なる。

 だから感染しないように、なるべく外出を控え、感染防御に気を使っていらっしゃるそうなんですが、病院や通勤、子育てのために出かけなければならないことももちろんあるわけです。

 感染者数の増加が日々報じられる中、目に見えないコロナはやはりそこかしこに潜んでいるような感覚になって、人混みの中に入る時には命の危険を感じる。とても覚悟の要ることになっているといいます。

 コロナに対する感じ方は人それぞれなので、マスクをしていない人とか、大きな声で話している人は、水戸部さんにとってはまさに脅威です。

 その配慮のなさに落胆させられたり、「黙ってやるせなさに耐えるしかない」という気持ちになったりしているそうです。

 若い方が「コロナにそんなに脅威を感じられない」というのは無理のないことかもしれません。

 ですが、こういう思いをしていらっしゃる方がたくさんいるということを少し想像ができればな、と私も日々思います。

ワクチン接種は?…

この記事は有料記事です。残り8417文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら