お産の事故の補償「不合理な基準で対象外」 さかのぼって救済可能か

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山下剛
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 「もし、自分の子どもが重度脳性まひになったら、補償される制度に登録していますか?」

 神奈川県に住む30代の女性は、病院でこんなポスターを目にするたびに複雑な気持ちになる。

 ポスターは「産科医療補償制度」を紹介するものだが、重度の脳性まひになった長男(6)は、補償の対象になっていない。

同じ脳性まひでも「対象外」

 出産したのは2015年12月。胎盤が子宮口をふさぐ前置胎盤だったために入院していたが、大量に出血。妊娠30週で帝王切開になった。

 出産後、新生児集中治療室(NICU)に入院していた長男は、「脳室周囲白質軟化症」と診断された。医師から「出産前後に低酸素状態になった」と説明を受けた。

 産科医療補償制度は、出産の事故で赤ちゃんが重い脳性まひになった場合に、総額3千万円の補償金が支払われる仕組み。出産の事故による訴訟のリスクが産科医不足の一因になっているとして、09年に始まった。

 健康保険から妊婦に支払われる出産育児一時金をもとに、医療機関が掛け金を支払っている。21年12月現在で4671件の申請があり、そのうち3543件が補償対象になった。

 制度では、21年までに妊娠28週以上32週未満で産まれた子どもの場合、低酸素状態を示す数値などの基準をもとに、個別に審査をしている。医師からは「これまでの経験上、通ると思います」と言われて申請したが、審査の結果、対象外に。長男のケースはこの基準を満たしていないという理由だった。異議申し立てもしたが、覆らなかった。

 制度を運営する財団法人「日本医療機能評価機構」のウェブサイトには、補償対象になった事例を紹介する原因分析報告書が公開されている。女性が一つひとつみていくと、妊娠の週数や出生体重はほぼ同じで、低酸素状態を示す数値は長男よりもいいのに対象になっているケースがみつかった。

 なぜ長男は対象外だったのか。釈然としない思いを抱えながらも、異議申し立てが却下されたのを機に、補償制度のことは忘れかけていた。

 思い出すことになったのは、その審査基準が見直されると、機構のウェブサイトで知ったからだ。

 見直しを検討する会議のメン…

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