神経の元になる細胞「60代から10代に」 マウスで若返りに成功

瀬川茂子
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 老化とともに衰える神経細胞の「元」を遺伝子操作で若返らせ、マウスの認知機能を改善することに京都大ウイルス・再生医科学研究所のグループが成功した。16日、米専門誌に発表する。

 この細胞は脳にある「神経幹細胞」。胎児の間は活発に増殖して神経細胞を増やすが、老化とともに増殖する力がなくなっていき、認知機能も衰える。

 グループは胎児マウスの脳と、老齢マウスの脳の神経幹細胞で働く遺伝子を比べた。胎児でよく働いている遺伝子80種類のうち、神経幹細胞を活性化させる作用が強い遺伝子を突き止めた。次に老齢マウスの神経幹細胞でよく働いている遺伝子を抑えると、神経幹細胞を活性化できることも判明した。

 その上で、胎児で見つけた遺伝子はたくさん働かせる一方で、老齢で見つけた遺伝子を抑えるという両方の合わせ技で、神経幹細胞を最も活性化させる方法を開発。「iPaD」と名付けたこの方法で、老齢マウスの脳を遺伝子操作した。

 すると、増殖能力をほぼ失っていた神経幹細胞は活性化し3カ月以上、増え続けた。老齢マウスは、空間記憶や新しい置物の認識記憶が低下するが、遺伝子操作したマウスは、老齢でもこうした認知能力が改善することも確かめた。

 今後は霊長類でもこの方法の効果があるかどうか、マーモセットを使って確認していくという。マウスの遺伝子操作は、脳にウイルスを使って遺伝子を入れており、ヒトに直接応用することはむずかしい。グループの影山龍一郎客員教授は「ヒトでいうと60代が10代の神経幹細胞に若返ったようなもの。ヒトの脳に使える方法も探っていきたい」と話している。瀬川茂子

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