新横綱は苦しむもの? 困難くぐり抜けた照ノ富士、逆転で全勝ターン

小俣勇貴
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 大相撲秋場所(東京・国技館)は8日目の19日、新横綱の照ノ富士が逆転勝利で全勝ターンを決めた。

 結びの立ち合い。無傷の照ノ富士が一気に押された。玉鷲に右腕を封じられ、強烈なのどわを食らい、土俵際へ。鮮やかな速攻が決まりかけた。

 今場所最大のピンチ。それでも、動じないのが照ノ富士だ。左足でふんばって体をつけて体勢を戻す。両まわしをつかんで逆転の寄り切り。「冷静に取れたかな」と、涼しい顔で勝ち名乗りを受けた。八角理事長(元横綱北勝海)もうなった。「立派ですよね。新横綱で相撲が落ち着いている」

 15日制が定着した1949年夏場所以降、照ノ富士も含めた新横綱33人のうち、全勝ターンを決めたのは6人しかいない。そのうち賜杯(しはい)をつかんだのは、隆の里と稀勢の里の2人だけだ。綱の重圧だけではない。あいさつ回りや行事が立て込み、稽古が十分に積めないことも一因にあげられてきた。

 照ノ富士は、昇進決定直後に開幕を迎えた東京五輪を、「(テレビで)見る暇がなかった」という。これまでの新横綱たちのように、多忙が理由ではない。治療に専念していたのだという。「一日中、寝ていても、相撲のことを考えている」という29歳には、コロナ禍で土俵外の催し事が最小限にとどめられたこともプラスに働いたのだろう。

 土俵入りの緊張感にも慣れてきたという新横綱。ストレート給金を決め、淡々と語った。「まだ終わったわけではないので」。後続とは1差。迎える後半戦、隙が見当たらない。(小俣勇貴)

 ○妙義龍 1敗で後半戦へ。「思い切って、悔いの残らないようにいきたいと思います」

 ○千代翔馬 立ち合い変化で初日を出し、「体が勝手に動いちゃいました」と苦笑。「負けても人生が終わるもんじゃない。一日一番、頑張ります」

 ○琴ノ若 大関戦初勝利。「(正代に)立ち合いでもっていかれましたけど、真っ向から当たれた。緊張せずに楽しんで取れていると思います」

 ●正代 初顔の琴ノ若に敗れ、痛い3敗目。「若い力士がどんどん出てきていると思うので、負けてられないなっていうのは感じます」

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