井村屋・中島伸子社長に聞く 女性管理職の増やし方

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南日慶子
「消費が『ちょっと良いモノ』嗜好になっています」井村屋グループ中島伸子社長インタビュー
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 「あずきバー」や肉まんなどで知られる井村屋グループでいま、社長を務めるのは中島伸子さん。アルバイトから正社員、管理職とキャリアを積み上げて、2019年にトップに就任した。女性の管理職はどうしたら増えるのか、自身の経験から語ってもらった。

――中島さんが管理職の道を歩みはじめたきっかけを教えてください。

 「福井の営業所で経理課長だった頃、本社の人事部長に『総合職になって、営業所長になってほしい』と言われたことが転機でした。ちょうど男女雇用機会均等法ができた頃(1986年ごろ)でした。私は『営業したことがないのにできるのか』と言ったのですが、『小豆を使ったことのない男性でも商品を売りに行っている。女性には消費者という強みがある。非常に重要だ』と言われ、決断しました。1998年に北陸支店長になり、福井から約1時間半かけて電車通勤すると決めたのも、今振り返れば勇気ある決断でしたね。ただ、私生活より仕事を優先してきましたね。私は子供が3人いるのですが、祖母や近所の人、会社の人に助けてもらいました」

中島伸子さんの略歴

なかじま・のぶこ 新潟県出身の68歳。1978年、井村屋製菓(現井村屋グループ)に入社し、関東支店長、副会長を歴任。2019年4月から社長兼最高執行責任者(COO)を務める

――頑張りが認められたと。

 「自分が率先垂範して一生懸命学び、部下も同じようにやってくれました。あと、やはりここまで来られたのはトップの意識が大きいです。浅田剛夫会長が手本を示してくれました」

 「私が取締役に就任した当時、女性は十数人いるなかで私1人でした。意見を聞く場合、当時社長だった浅田会長は、いつでも最初に私を指名しました。最初に意見を聞かれれば、自分の思ったことを言うしかない。先に年配の知見のある人が意見を言っていては、反対意見は言いにくいですよね。声の大きい人に意見が左右されなくなりました。なので、私も最近役員になった人から意見を聞くようにしています」

――後に続く女性の管理職は増えていますか。

 「いま課長級の14・5%が女性です。この下の副主任、主任クラスだと男女比は2対1になっていて、3割を超えます」

――女性管理職を増やすため、どんな取り組みを積み重ねてきましたか。

 「私が2011年に三重県の本社に来て以降ですが、敷地内にある託児所の開始時間を早めてほしいという希望があり、午前8時から午前7時30分に早めたら、ほとんどの女性が午前8時までに子供を預けて、始業時の朝礼に間に合うように仕事をするようになったんです。モチベーションを上げて仕事をする気概はすごいなと感じましたが、管理職の女性比率は2%だったんです。当時、役員になるには総合職になるしかなく、高卒の女性社員が中心の一般職には管理職への道がなかったんです。これを見直そうと、2年間かけて検討し、2015年に一般職、エリア総合職、総合職の三つの職群を一つにして、誰でも役員や管理職に就けるようにしました。また、その前に5年間かけて女性だけ1泊2日の管理職研修をしたんです。男性から男性差別だという声が上がりましたが、浅田会長に相談したら『今までが遅れていただけだ』と一蹴され、私も勇気づけられました。こうした準備をして計画的に実力をつけながら女性の管理職を増やしてきました」

――自信がない、という女性はいませんか。

 「確かにそういう人はいますが、私は自信がないという人に対しては資格をとることを勧めています。私は1972年に福井県で起きた北陸トンネルの列車火災事故にあって、声が出なくなり、教師になる夢をあきらめました。どうやって生きていこうと考えたときにいろいろな資格にチャレンジしたんです。消費生活アドバイザー、調理師免許、校正士も取りました。わずかな資格でも自分の自信につながると思いますし、会社でも資格取得を支援しています。1本の骨になる資格ができると、それを増やすのが楽しみになっていくこともあります」

――これからは環境への意識も大切になってきます。

 「食品ロスについては2019年比で50%削減を目指してやっていきます。肉まんだったら、敷紙の定位置からまんじゅうがずれるとロスにつながります。デジタルトランスメーション(DX)戦略のチームを作って徹底的にゼロを目指しています。食品ロスは昨年約30%まで削減できました。また、「やわもちアイス」のカップをプラスチックから紙に変えました。環境課題を国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の観点からゼロベースで一つひとつ見直しており、今年はもう一歩取り組みを深めていきたいと思っています」

記事の後半では・・・

朝日新聞の主要100社アンケートと同じ質問にも答えてもらいつつ、消費の動向や政権のコロナ対策への評価を聞きました

――朝日新聞の全国主要100…

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    長島美紀
    (SDGsジャパン 理事)
    2021年6月22日17時18分 投稿
    【視点】

    総合職になる転機となる人事部長の『小豆を使ったことのない男性でも商品を売りに行っている。女性には消費者という強みがある』という言葉や、中島さん自身が女性社員の声に耳をかたむけ、託児所の開始時間を変えることが女性社員のやる気につながるなど、<

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    田中俊之
    (大妻女子大学准教授 男性学研究者)
    2021年6月22日17時48分 投稿
    【解説】

    女性のみを対象とした管理職研修に対して、男性から男性差別という声が上がったそうですが、こうした男性には、「男女不平等な職場環境だから女性のみの管理職研修が必要になった」ことを理解してもらいたいと思います。女性がより活躍できる会社にするために

    …続きを読む
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男女格差が主要先進国で最下位の日本。この社会で生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。性別に関係なく平等に機会があり、だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダー〈社会的・文化的に作られた性差〉について、一緒に考えませんか。[もっと見る]