小倉城竹あかり、今年も 広がるボランティアの輪

緒方健二
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 夜の小倉城北九州小倉北区)周辺を竹の灯籠(とうろう)で照らし、幻想的な空間に変える「小倉城 竹あかり」が今年も開かれる。3回目の今回は、10月に北九州市で開催予定の世界体操・新体操選手権に合わせて催す。膨大な作業をこなすボランティア集めが課題だ。

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 世界体操選手権は10月18~24日、世界新体操選手権は10月27~31日に予定されている。竹あかりはこの間の23~31日に催し、海外から訪れる選手や観客にも小倉の魅力を伝えたい――。実行委員会はそう願う。

 竹あかりは観光振興や環境保全とともに「市民力結集」をテーマに掲げる。そのため準備と運営を市民ボランティアが担う。「少なくとも3千人が必要」(実行委員会)という。

 実際、作業量は多い。まず放置された竹林から約40トンの竹を切り出し、作業場へ運ぶ。大小約3万個の灯籠(とうろう)を作って会場に並べ、1個ずつ中のろうそくに点火する。終了後は脱臭剤などへの加工のほか、山の保全のため、竹を伐採した跡地にはクヌギなどを植える。

 人手確保のため、実行委は今後、市内の学校や自治会、商店主などに協力を求める。そんななか、「北九州のために」と名乗り出る人の輪が広がりつつある。

 食肉卸売り・小売業「パワーミート」(小倉北区)経営の江藤浩さん(55)は、今年初めて参加する。牛肉を卸しているうどん店「元祖 京家」(小倉北区)を営む中本隆さん(55)に誘われ応じた。中本さんは昨年から参加している。

 「生まれ育った北九州が大好きだし、会社も小倉。地元のためにできることをしたい」と話す江藤さんは早速、灯籠作りに必要な機材を作業場に運んだ。2019年の初回の様子を見て美しさに感動したという。

 その写真を、会社で肉のさばき方や唐揚げづくりを学んでいるベトナムの人たちに見せ、ボランティアに誘うと興味を示したという。小倉の魅力を海外に伝える好機ととらえている。

 江藤さんには、若い世代の社会貢献を促したいとの願いもある。「ボランティアの大切さや楽しさを教え、伝えることはぼくたち世代の務めです」

 小倉北区で洋風居酒屋「BUTABAR きれんじ家」を営む末永聡史さん(46)も初参加を決めた。新型コロナウイルスもきっかけだ。長野県にいる飲食業の知人は、医療従事者に弁当を無料で届けている。自分にやれることを、と手を挙げた。「コロナの影響で仕事を辞めた同業者が多い。みんなしんみりして、動きが乏しい。弱っている街を盛り上げるため縁の下の力持ちになりたい」

 小倉南区の左官工事業、杉山陵太さん(33)は初回の「竹あかり」を見に行った時、観客が「これ作った人に感謝やねえ」としみじみと語るのを聞き感激した。ボランティアは2回目からだ。「生まれ育った小倉の役に立ちたい。人生の先輩に接して成長でき、違う世界が開けるのがボランティア。若いけえ、力仕事でも何でもやる」と語る。

 杉山さんと結婚予定の伊藤綾香さん(32)は小学生の時、熊本県から北九州に。「人が温かく、優しい」と、この街を気に入っている。昨年に続いて今回も参加する。「本番やボランティアの素晴らしさは体験せんとわからん」。参加できない人向けに動画を送り、魅力を伝えるという。

 末永さんが、高校生の娘に参加を告げると「私もいつかは」と答えてくれた。ボランティアのあかりは若い世代の間でも、ともり始めている。問い合わせは実行委員会(090・3733・5304)へ。(緒方健二)

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