検査拡大で若者の陽性者が大幅増

松浦新 長谷川陽子
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 新型コロナウイルスの感染が再び拡大を始めてから約3カ月。埼玉県内での感染確認が減少傾向になったため、「第1波」と「第2波」を分析したところ、検査が増えた2波で若者の陽性者が大幅に増えたことがわかった。高齢者の感染が比較的抑えられた結果、致死率は下がっている。専門家は検査拡大などの対策をさらに徹底するべきだと指摘している。松浦新長谷川陽子

 埼玉県が最初の陽性者を確認した2月1日から陽性者が「ゼロ」だった6月15日までを「第1波」、再度、陽性者が出始めた6月16日から9月13日までを「第2波」として、年齢や性別が公表された4290人を分析した。

 1波の136日間の陽性者は1019人(再陽性を除く)だが、2波は90日間で3倍以上の3271人(同)に達した。

 男女比でみると、1波が男性57%、2波が同56%とほぼ同じ。年代別では1波は50代が20%(2波は13%)、40代が18%(同15%)と中年が顕著だったのに対し、2波は20代が30%(1波は15%)、30代が17%(同12%)で、20歳未満も10%(同4%)と若者の陽性者が目立った。

 この違いは、PCR検査の運用の影響が大きいと見られる。1波の時期は保健所を通じた検査が多く、帰国者や感染が確認された人の濃厚接触者でなければ、肺炎が確認されても入院が必要なほど症状が重くなければ検査に進めないなどの厳しい基準が適用されていた。

 2波の時期では、各地の医師会がPCRセンターを設けるなど保健所の基準外の検査が増えた。検査数に対する陽性者の割合である「陽性率」も、1波は県内のピークのころの15%など、2ケタが珍しくなかったが、2波は高くても4%と、検査対象の幅が広がったことがわかる。

 1波では症状が軽いことが多い若者が検査で把握されずに活動し、感染拡大の一因になった可能性が高い。1波の後半には病院や介護施設での感染が続き、多くの高齢者が亡くなった。2波では70歳以上の陽性者は8%(1波は21%)。陽性者に対する死者の割合である「致死率」は1波の5・0%に対して2波は1・4%に下がった。

 医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は「2波では医療関係者の意識が向上し、院内感染の拡大が抑制された。PCR検査の拡大で比較的初期の封じ込めもできた。新型コロナの特効薬はない。今後も検査と小さな努力を積み重ねるしかない」と指摘している。

 県は、今後に備えて検査数を増やすとともに、県医師会と協力して、身近な診療所などで検査が受けられる体制の整備を進める。

 PCR検査は、各地の医師会が設けたPCRセンターで受ける綿棒による検体の採取に加え、唾液(だえき)の検査を拡充する。唾液は患者が容器に出せば確保できるため、採取する医師らの感染リスクが大きく下がる。診療所などでも採取がしやすくなる。

 今後、各地の医師会を通じて参加する医療機関を募り、医療機関名を公表する。新型コロナと見分けにくいインフルエンザが流行する季節を迎える。医療機関での感染拡大を防ぐため、発熱患者はまず、受診したい医療機関に電話して指示を受ける。かかりつけ医を持たない人のために保健所などの相談センターの機能も残す。

 国は10月中に医療機関名公表などの体制整備をするよう求めているが、都道府県などへの通知は今月4日。医療機関側には、公表により患者が集中することを心配する声も強く、調整は難航しそうだ。大野元裕知事は17日の会見で、国の対応を「若干遅い」と批判しつつ「(方針が)示された以上、粛々と早急に体制をつくりたい」と話している。

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