取材相手から「どっちの味方か」 産業保護と普及の間で

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追跡メイドインジャパン和牛編 取材後記

 みなさんは、最近いつ「和牛」を食べましたか?

 スーパーの牛肉売り場の大部分を占めるのは米国産牛や豪州産牛ばかりだ。それに比べ、和牛コーナーは狭い。普段の食卓に並べるにはやはり高額で、数が売れないからだろう。

 その和牛が、世界のグルメの間でブームになっているという。日本人にとって、和牛とは「特別な日に奮発して食べるもの」というイメージなのに……。

 私も消費者として、できれば手頃な価格で和牛を食べたいと思う。それは世界の消費者も同じ気持ちだろう。日本が和牛の遺伝資源を守れば、日本と世界の消費者をどちらも満足させることができるのだろうか。疑問をかかえながら、半年取材を続けた。

 「国の宝」として保護される日本の和牛と、世界に広く売られる豪州産などの「Wagyu」。取材先から「どっちの味方なんだ」とよく聞かれた。和牛の遺伝資源を守るのか世界に出すべきだというのか、と。

 日本の畜産農家を守ることには大賛成だ。だが一方で、Wagyuが世界で広く食べられていることや、Wagyuの存在を世界に知らしめたのが日本ではなく豪州や米国などの畜産大国であることを、当の日本人があまりに知らないままで来たと思う。

 取材では、さまざまなWagyuと出会った。海外でWagyuとして育ち、日本で「国産牛」の表示で売られる牛肉。日本企業が海外で育て、海外に売り込むWagyuもあった。

 みなさんがスーパーで買い物をするとき、判断基準は様々だろう。国産かどうか、値段、味……。その背景には、たくさんの物語や理由がある。今回の企画を通じて、和牛やWagyuの背景を知ってもらいたい。何より食材は、自分が口にするものなのだから。(沢伸也)

     ◇

●取材・撮影・編集

〈社会部〉

沢伸也、高橋大作

〈国際報道部〉

竹花徹朗

〈映像報道部〉

長島一浩、日吉健吾

〈デジタル編集部〉

平井隆介、西田堅一、森本浩一郎、根本寿彦(ルートメディア)

●ウェブ制作・デザイン

〈朝日新聞メディアプロダクション〉

佐藤義晴、小倉誼之

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