「外交の安倍」目立つ変節 専門家「足元を見られた」

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編集委員・佐藤武嗣
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 ゴルフと大相撲、炉端焼きと異例の「接待外交」を展開した安倍晋三首相。5月27日、迎賓館でトランプ米大統領と臨んだ共同記者会見では、北朝鮮問題で「日米の立場は完全に一致した」と胸を張り、日米蜜月を最大限演出した。

首相に復帰して6年半。「外交の安倍」と言われるが主要課題は手詰まり感が漂う。強硬一辺倒だった対北朝鮮政策で「前提条件なしの対話」に転換も、説明なし。政権は外交を、内向きの政権浮揚や選挙に利用していないか。

 だが、米メディアはこうした首相の演出が空振りに終わったと報じた。CNNは「北朝鮮と貿易では、安倍首相の努力への見返りは感じ取れなかった」と皮肉り、トランプ氏が対日貿易赤字削減を強く求め、「安倍が懇願した鉄鋼・アルミの関税撤廃を無視した」。ニューヨーク・タイムズも「トランプと安倍の『揺るぎない絆』に亀裂が見えた」と見出しをつけた。

 安倍首相が掲げた主要な外交方針は手詰まり感が漂い、「変節」も目立つ。

 「米国抜きのTPP(環太平洋経済連携協定)は意味がない」。首相はトランプ氏の大統領就任前、こう強調していたが、米国のTPP離脱後、日本は米国抜きのTPP11を主導した。

 日本市場では、カナダ豪州などTPP加盟国の関税が削減・撤廃される一方、TPP不参加の米国の農産品などの競争力は低下。日本政府は、不利となる米国にTPP復帰を促そうとの戦略を一度は描いたが、昨年4月の日米首脳会談でトランプ氏が「二国間の協定の方がよい」と迫ると、9月に「二国間交渉」を受け入れた。

 元農水官僚の山下一仁・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹は「TPPを離れて不利を被り、焦っているのは米国。なぜ日本が米国の言うがままに二国間交渉を甘受したのか、説明が必要だ」とし、「二国間協定を結び、米国がTPP加盟国並みの条件を獲得すれば、米国のTPP復帰はより遠のく」と批判する。

説明がないままの転換

 より深刻な「変節」は北朝鮮とロシアへの外交方針だ。

 「条件をつけずに金(正恩〈…

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