いい本は売れるんだ 「漫画 君たちはどう生きるか」(吉野源三郎)

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松尾慈子
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漫画偏愛主義

 本が売れる様子を間近に見てしまった、という気持ちだ。今回は作品を語るのではなく、ある意味「舞台裏」を語らせてもらいたい。何しろ原書は1937年著の名作であり、漫画版の本作は95万部のベストセラー、本屋にも平積み状態で、本好き漫画好きの方にはもう説明不要であろうから。

 本作は編集者・児童文学者で、雑誌「世界」の初代編集長もつとめた吉野源三郎の作品。勇気、いじめ、貧困、格差、教育など今も変わらない問題に向き合う主人公コペル君(これはもちろん16世紀の天文学者コペルニクスからとったあだ名だが)、そして彼を見守る叔父さんの2人が主人公。叔父さんはコペル君を導くのではなく、語りかけつつも最後の答えはコペル君に考えさせる。人間としてあるべき姿を求める2人の物語である。

 日中戦争の発端となる盧溝橋

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