沖縄戦の10年前、島の暮らし映す 識者「貴重な写真」

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吉田拓史 沖縄タイムス・与儀武秀
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 朝日新聞大阪本社で大量に見つかった、戦前の沖縄を撮ったネガは、大阪朝日新聞(当時)の記者たちが、海を渡って沖縄に入り、取材したときのものだ。沖縄戦の10年前に撮影された当時の沖縄の人(ウチナーンチュ)たちの生活が、82年の歳月を経て、現代によみがえった。

段ボール箱に大量のネガ

 大量のネガが見つかったのは、偶然が重なった結果だった。

 2013年に朝日新聞大阪本社が新社屋に移転。その後、社員が資料を整理していて、古い段ボール箱を見つけた。中に「沖縄」と書かれた小箱があり、丸まったネガや撮影状況を記したメモが入っていた。戦前の沖縄の写真は、朝日新聞のデータベースにもほとんど残っておらず、貴重なネガであることがわかった。

 調べてみると、ネガは18年ほど前、朝日新聞大阪本社写真部のOB横田巳之助氏(58年、65歳で死去)の長男(故人)から「大阪市内の自宅に、朝日の写真がある」と連絡があり、引き取ったものだった。

 横田氏は、沖縄の写真を撮影した藤本護氏の先輩で、藤本氏が亡くなった2年後の48年に定年退職している。

 元大阪本社写真部長の服部有人さん(82)によると、終戦直後、新聞社は戦争に関連した写真や文書を一斉に処分した。戦争責任の追及を恐れた軍部から命令や圧力があったとされる。一方で「個人的に『これは大事』と思ったものを自宅に持ち帰り、隠した人もいた」という。

 藤本氏のネガを横田氏が引き取り、自宅に持って帰ったとみられる。沖縄のネガが入っていた段ボール箱には他にも、ソ連軍が撮影したとみられる日本人スパイの処刑写真を接写したものもあった。段ボール箱は、横田家の押し入れの奥に数十年にわたって、しまわれていた。

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