被告は息子、老親が提訴 増える裁判、変わる中国の伝統
山根祐作
老いる巨龍――事件で見る中国の少子高齢化:5(マンスリーコラム)
息子が年老いた両親に頼んで、息子自身を被告として相手取った裁判を起こしてもらう――。
そんな一風変わった訴訟があったと、今年1月下旬の春節(旧正月)直前、中国司法省系列紙の「法制日報」で報じられた。息子が奇策を講じたのは、「実家に帰省して、両親に会いたい」との一心からだった。
春節は、中国で最も大切にされる祝日だ。普段は離れて暮らす家族も、このときばかりは故郷に帰省し、一家だんらんのひとときを共にする。それが伝統的な春節の過ごし方だ。
しかし近年は、春節も故郷に帰れない、または帰らない人が少なくない。遠方の都市での就職や出稼ぎが増え、仕事の忙しさや競争激化で長期休暇がとりにくい。生活費や教育費で経済的余裕がなかったり、余裕があっても海外旅行を選んだりと、社会情勢や価値観が変わってきた。
「とてもいい仕事」のはずが
冒頭で紹介した裁判のいきさつはこうだ。
北京の西にある河北省唐山市…