2人目は産みたくない 「国の老い」急激に進む中国

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山根祐作
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老いる巨龍――事件で見る中国の少子高齢化:2(マンスリーコラム)

 「ぼくのお父さんとお母さんは2人目の子はいらない。もう小さな息子がいるからだ――携帯電話」

 昨夏、江蘇省で開催された子どもの詩のコンクールで一等賞を獲得した、同省常州市に住む小学6年生、費東(フェイトン)君の「携帯電話」と題した詩に、こんな一節があった。

 地元紙のインタビューに対し、費君は、両親が朝も夜も携帯電話で忙しそうに話してばかりで、自分が話しかけてもろくろく返事をしてくれない、と不満を訴えた。

 余裕のない大人たちの心を映したかのような費君の詩は、さらに「このままでいけば、やがて僕の地位も危うくなる。どうしたらいい?」と続く。コンクールの審査員の一人は、「大人の世界への切実な訴えであり、深く考えさせられる」と評した。

 日常生活のプレッシャー、将来への安心感のなさ、多忙な仕事……。今の中国を生きる家族が抱える不安や葛藤が、その子どもたちの心情だけでなく、大国の「歴史的転換」の行方にも影を落としている。

「皮算用」の甘さが露呈

 中国で、「国の老い」が急速に進む。高齢化の裏にあるのは少子化だ。介護を家族だけに負わせず、社会全体で支える「介護の社会化」が進まない一方で、根強かったはずの「多子多福」(子どもが多いほど幸せ)という伝統的な観念は色あせている。労働力人口が減少して、増える高齢者を支え切れなくなれば、社会不安につながりかねない。

 中国では、すべての夫婦が2人の子どもを持つことを認める人口・計画出産法の改正法が昨年1月に施行され、1979年以来続いてきた一人っ子政策が廃止された。

 急激な高齢化への強い危機感が大きな政策転換を促した。国連は、高齢化率(65歳以上が人口に占める割合)が7%を超えた社会を「高齢化社会」、14%超を「高齢社会」と定義し、7%から14%に達するまでの期間を「倍加年数」と呼ぶ。中国の倍加年数は23年(2002年から25年)と予測され、日本の24年(1970年から94年)よりも速いペースで高齢化が進む。

 一人っ子政策の廃止で、9千万組の夫婦が2人目の子どもを持つことが可能になり、従来の予測に比べて、2050年には労働人口が3千万~4千万人増えるとの試算も出た。

 ところが、この「皮算用」の甘さが早々に露呈している。

 昨年10月に明らかになった…

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