わがまちの介護保険料、どうなる? 制度の産婆役に聞く

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聞き手・水戸部六美
【動画】厚生労働省で介護保険の制度作りを担った堤修三さんに聞く=瀬戸口翼撮影
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 年金から天引きされる介護保険料は、よそと比べて高いのか、低いのか……。疑問に思ったことはありませんか? 朝日新聞デジタルでは、市町村の介護保険料の違いが一目でわかるページをオープンしました。「比べてみよう わがまちの介護保険料」です。介護が必要な人が増えるので、保険料は引き上げが続いています。介護保険は、今後どうなっていくのでしょうか?

 介護保険がスタートした2000年前後に、厚生労働省で実際の制度づくりを担った「産婆役」の堤修三さん(67)に話を聞きました。堤さんは、保険料などで賄う費用を抑制しようと、サービスの対象者の範囲を狭めようとする国の動きは「禁じ手」で、この路線が続けば「逃げ水介護保険」になってしまうと危惧しています。それは、どういう意味なのでしょうか?

 ――制度創設時、介護保険料は全国平均で2911円でしたが、現在は5514円です。高くなりすぎることを心配していなかったのですか?

 高齢化は当然、予想していましたが、要介護認定率がどうなるかは正確な予測ができませんでした。

 むしろ制度をつくる時に心配したのは、「ちゃんとサービスを用意できるか?」でした。保険料を負担してもらっているのに、使えるサービスがないという状況になるのを、おそれたのです。

 でも、なぜ保険料が上がることが問題なのでしょうか。介護が必要な人がサービスを受けるために上がっているのです。1―2割の自己負担でサービスを受けられている人たちは、保険料を払うのに納得していると思います。

 保険料のほか、公費や現役世代の負担も加えて制度が支えられていることを、しっかり説明して納得してもらう努力を、もっとすべきだと思います。

 ――しかし、実際にサービスを受けている人は65歳以上でも2割弱しかいません。納得してもらうのは難しいのでは?

 確かに、そこは介護保険の弱点です。

 医療なら、若い人でも風邪をひくとか年に1回くらいは病院にいくので保険の恩恵が実感しやすい。しかし、介護保険で要介護認定を受けている人は2割程度で、8割以上の人は「掛け捨て」になっています。私はいま67歳ですが、65~69歳の要介護認定率にいたっては3%台(厚生労働省推計)です。介護を受けている人はほとんどいません。

 それでも納得して保険料を払うとすれば、「いま要介護の人たちが受けているサービスを将来自分が要介護になったときにも受けられる」と思うからです。そこには、長期的な約束が内包されているんです。

国の動きは「禁じ手」

 ――もっと要介護度が高い人だけに絞って、介護サービスを重点化すべきだという意見もありますし、国もその方向で制度を見直しているように見えます。

 それは「禁じ手」です。「掛け捨て」の人を増やしてしまうからです。

 前回の改正で、たとえば特別…

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