(関西食百景)笑顔咲かせて 黒糖100年
文・大貫聡子 写真・伊藤進之介
2014年2月に始まった関西食百景は、おかげさまで100回をむかえました。これからも食材の産地やこだわりの店を訪ね、関西の食文化を探っていきます。
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大阪の砂糖
香ばしく甘い香りが立ちこめていた。ステンレス製の皿に載せられた茶褐色の小山は、うっすらと湯気を立てていた。口に含むと温かい。ほのかに優しい甘さが広がった。
大阪市浪速区の上野砂糖。社長の上野誠一郎さん(62)が「おいしいでしょ」と目尻を下げた。大正2(1913)年、祖父の清作さんが大阪市西区で創業した。以来およそ100年、黒砂糖を加工した「焚(たき)黒糖」などの砂糖を作る。
江戸時代、大坂は「砂糖の町」だった。堺筋には200軒もの仲買や加工業者がひしめいていたが現在、府内で砂糖をつくるのは数社だけ。
サトウキビの樹液を煮詰めた黒砂糖は収穫時期や産地によって糖度や風味にバラつきがある。色が濃いものや、ミネラルが多いものなど、個性の強い黒砂糖を配合し、安定した甘さや風味にする。
ミネラルなどの栄養分は残し、不純物だけを取り除くため、濾過(ろか)や高温での煮沸を繰り返す。さらに、機械でチョコレートのような粘り気が出るまでかき回し、冷まして砕くと、素朴な焚黒糖が姿をあらわす。
最近では成形し、口溶けをよくした小粒タイプも作る。
口のなかでほろほろと溶ける懐かしい甘さ。ここには大阪の歴史が詰まっている。
■大阪もん 人つなげる優しい…
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