ガソリン車は生き残るか?ランボルギーニに乗って考えた

北林慎也
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JAIA主催輸入車試乗会インプレッション(下)

 日本自動車輸入組合(JAIA)主催のメディア向け輸入車試乗会が2月初旬、神奈川県大磯町であった。スーパーカーから電気自動車(EV)、商用バンまで注目の10台について、朝日新聞デジタル編集部記者の「独断と偏見」による比較形式で報告する。第2弾のテーマは「ガソリンエンジン車が生き残る道は?」。昔ながらの内燃機関の楽しみ方を探った。

スーパーカー頂上決戦 「ランボルギーニ・ウラカンLP610―4」vs.「シボレー・コルベットZ51」

 エコや安全対策など最先端の技術にこだわって意識高そうな自動車ファンを気取っても、やはり暴力的な加速や、けたたましい吸排気音の魅力は永遠だ。

 伝統も知名度もあるのに、大味な作りのイメージからか、ピュアスポーツカー市場ではあまり見向きされなかったコルベット。かたや、1970年代のスーパーカーブームで圧倒的な人気だったカウンタック以来、スーパーカー王国の地位が揺るがないランボルギーニ。

 イタリアの荒ぶる猛牛ことランボルギーニもフォルクスワーゲン(VW)グループに入って久しいためか、獰猛(どうもう)そうなエクステリアとは裏腹に、アイドリングストップまで備える「行儀の良さ」が目立ってきた。まるでエヴァンゲリオンのような幾何学的デザインの内装も、どこかクールに感じる。アクセルを踏み込んでも、四駆のおかげで高出力ミッドシップにありがちな車体のふらつきがない。

 ただ、それでは3千万円近い車両価格に見合う刺激が足りないという配慮からか、F1マシンのようにハンドルのスイッチで走行モードを「スポルト」に切り替えると、V10エンジンがうって変わってけたたましく響く。ただ演出過剰な感は否めず、昔の軽自動車の2ストロークエンジンのように騒がしく聞こえてしまう。

 対するコルベットは、「強いアメリカ」の象徴ともいえる存在感を放つ。ロングノーズ・ショートデッキの古典的GTカーの正常進化といった印象だ。文句なしに格好良く、ワイルドさと洗練さのバランスが絶妙だ。

 7速マニュアルはシフトパターンが細かすぎ、慣れないとシフトミスを連発してしまうが、豊かなトルクの恩恵で、低速ではシフトチェンジしなくてもグイグイ走る。チューンドV8の7速マニュアルという硬派仕様なのに悠然と走りたくなるのは、昔ながらのおおらかなアメ車のキャラクターゆえか。

ホントに楽しいのはどっち? 禁断の同門対決 「ルノー・ルーテシアR.S.トロフィー」vs.「ルノー・カングー ゼン」

 カルロス・ゴーンCEOの手腕で業績が好調な仏ルノー。近年のクルマは走行性能のアベレージが高く、自動車評論家にも好評だ。グループ企業の日産自動車がモータースポーツのノウハウをつぎ込んでチューンした高回転型エンジンと、俊敏なシフトチェンジを実現した2ペダルマニュアルが印象的なルーテシアR.S.トロフィー。一方で、文字どおり「禅」の境地のような、ムダをそぎ落とした昔ながらの3ペダルマニュアルで、背の高い車体をグイグイ引っ張るカングー。

 イスを作り慣れている国民性ゆえか、フランス車のシートは絶品だ。硬めの乗り心地のルーテシアR.S.も、コシのあるクッションで疲労は少ない。日産GT―R譲りのパドルシフトでかっ飛ばすのは痛快そのもの。

 ただ、カングーの潔さはもっと突き抜けた痛快さだ。ターボ付き1.2リッターは軽快に回り、武骨な乗り味は、車高の高さも相まっておのずとシャキッとした運転姿勢にさせられる。ステアリングシャフトまでむきだしの簡素な内張とベンチのような後席はいかにも商用車らしいが、「無印良品」的な機能美が漂う。

3気筒エンジンはCセグメントを制するか 「BMW118i」vs.「プジョー308GT Line」

 低排気量化と少気筒化によるダウサイジングの波は、大型車にとどまらない。国産メーカーが電気モーターを組み込むハイブリッド(HV)化にいそしむ一方で、欧州メーカーは、ガソリンと圧縮空気の混合による爆発でピストンを上下させ、クランクシャフトを回す内燃機関の原点を守りながら、燃費の効率化に努めてきた。大型バッテリーによる重量増や、回生ブレーキの不自然なタッチといったハンディがないため、走らせる喜びをより感じやすいのはダウンサイジングのほうだろう。国内では軽自動車のチープなエンジン、といった偏見も根強い3気筒エンジンのCセグメント小型車が充実してきた。

 縦置き3気筒の後輪駆動(FR)というと、ケータハム・セブン160や往年のスズキ・カプチーノといったスパルタンなスポーツカーが頭に浮かぶ。同じレイアウトのBMW118iはエンジンルームを開けると、小ぶりな3気筒エンジンが後端に位置し、前方に大きなスペースがある。フロントミッドシップと言っていいぐらいの重量バランス。山坂道で試せなかったのが残念なくらい、敏捷(びんしょう)性と回頭性に優れる。エンジン自体も、「シルキーシックス」と滑らかさを称賛された直列6気筒の系譜を感じさせる、特筆すべき静かさとなめらかさだ。

 一方、プジョー308はエンジンの静粛性やスムーズさはBMWに一歩譲るものの、クルマとしてトータルの完成度が高い。しなやかでしっとりした乗り心地、それでいて安心してアクセルを踏める直進性と安定性。加えてハイセンスで見切りのいいダッシュボード……。フランス車の懐の深さを垣間見た気がした。(北林慎也)

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