入居者虐待、53施設81件 転落死事件の系列ホーム
川崎市幸区の有料老人ホームで入居者3人が相次ぎ転落死した問題に絡み、施設運営会社の親会社「メッセージ」(岡山県)のグループ施設で、職員による入所者への虐待が2013年度以降で延べ81件あったことがわかった。同社が7日公表した第三者委員会の報告書で指摘された。
第三者委は弁護士らで構成。メ社と子会社「積和サポートシステム」(東京都中央区)が運営する有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の計275施設を対象に、13年4月~15年11月までの虐待の状況をアンケートした。転落死や窃盗などがあった川崎市の施設など、すでに問題が発覚した6施設は除いた。
その結果、延べ53施設で虐待があった。最多は「著しい暴言や心理的外傷を与える言動」の40件。「高齢者から不当に財産上の利益を得る」が17件、「身体に暴行」が16件、「衰弱させるような著しい減食、長時間の放置」などが7件、わいせつ行為が1件だった。
厚労省の調査では、13年度に把握した介護職員らによる虐待は全国で221件あった。メ社によると、今回判明した虐待をすべて報告しているかどうか「わからない」としている。
報告書では、入居者のけがや死亡といった自治体に報告義務がある介護事故が11年度以降で3731件あったのに対し、約4割の1526件を報告していなかったことも判明した。東京都内で大量の未報告が明らかになったことを受け、メ社が東京以外を調べた。メ社の担当者は「報告基準について理解不足だった。申し訳ない」と話している。
報告書では、一連の虐待や事故の原因について、重度の要介護者や認知症の人らも自由に行動できる「ノーマライゼーション」という運営方針を掲げながら、経営陣にリスク管理意識が足りなかったことを挙げた。問題への対応が現場任せだったことも指摘。通常の接し方以上の対応を求める入居者や家族に対し、従業員がストレスをこうじさせたことが原因の一つとなった可能性にも触れた。
厚労省は11月、メ社に業務改善を勧告。今月14日までに再発防止に向けた改善報告の提出を求めている。今回の報告書は「自主的に出されたもの」とする。