「寝た」日本と「立った」スコットランドの差 ラグビー

土井崇司の目

 前半のスコアは7―12。対等に戦っていたかに見える数字だが、主導権を握っていたのはスコットランドだった。

 日本は前半、中盤付近でもらった反則をなかなか得点につなげられなかったのに対し、スコットランドは五つの反則のうち四つを得点に変えた。こうなると、精神的には4分6分で日本の分が悪い。

 スコットランドは試合を作ってきた。相手を格下となめることなく、SHの正確なハイパントを日本FWの真後ろに落とし、味方FWを着実に前へ出した。このハイパントを起点として、日本の反則を誘発した。対する日本は、キックを有効に使えなかった。

 一人ひとりの個の力で突破を図った南アフリカと違って、スコットランドはおとりのランナーを有効に使い、組織的に日本のタックラーと1対1の状況を作り出していた。そうなると、日本の防御は差し込まれる。すかさず、スコットランドは15メートルラインとタッチラインの間に球を運び、ゲインを重ねていた。

 試合後のスタッツ(数値)を見ると、日本は地域獲得率でもボール保持率でも上回っていた。では、なぜ大差がついたか。それは、ボールを持った人間がすぐに寝てしまっていたからだ。日本は球を保持したいがために、すぐに寝るラグビーをしてしまった。これは、中学でも高校でも言えることだが、弱いチームはすぐ「寝て」しまい、強いチームは「立って」プレーできる。

 さらに日本は、15メートルラインと15メートルラインの間、つまりグラウンドの中央部分で球を動かしたため、相手の防御を崩せなかった。エディさんも言っているが、鍵を握るのは、「15メートルラインの外の空間」をどう生かすかだ。

 狭いスペースに球を運ぶこと。球を持った選手が、立って足をかき続けること。フィジカル自慢のサモアに勝つには、この二つが不可欠になってくる。

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 〈どい・たかし〉 東海大テクニカルアドバイザー。大阪・東海大仰星高を全国屈指の強豪に育て、多くの日本代表を生み出す名伯楽として知られる。近著に「もっとも新しいラグビーの教科書」(ベースボール・マガジン社)。55歳…

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