センター試験は成功、でも… 宇宙女子「可能性信じて」

聞き手・佐々木洋輔
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タレント・黒田有彩さん

 センター試験は会心の出来でした。模試でもとったことがないような高得点でした。

 国語が本当に苦手で、模試でも11月までは6割くらいの得点でした。これはまずいと思って最後の1カ月で過去問20年分を解きました。自分で決めたことをやり切った達成感からセンター当日はいい精神状態で迎えられました。

 「やったるぞ」と気合を入れて、設問最後の漢文から古文・評論・小説の順番で解きました。これが私の時間配分。始めの漢文が、まぁ驚くほど分かる! 思い浮かんだ答えがそのまま選択肢にあるという感覚。9割超えの快挙でした。

 2日目の数学では、これまで味わったことのない現象がおきました。興奮と集中で、右足が無意識にトントントンとリズムを刻んでいるんです。無音だったので周りに迷惑はかけてないと思うのですが、あの高揚感は今でも忘れられないですね。数学は200点満点でした。

第一志望には届かず

 でも、第一志望だった名古屋大学理学部は不合格でした。2次試験は母についてきてもらって、前日に名古屋入り。ただ、センターのときのような落ち着きはなく、何ものどを通らなかった。

 数学だったか、物理だったか。わからない問題にぶつかって頭が真っ白になりました。そうしたらもう立て直せなくなって。「落ちたな」と思いました。どんな問題が出たのかは全く思い出せませんが、帰りのバスで放心状態になっている私に母が「よくがんばったよ」とねぎらってくれたことは記憶に残っています。

 覚悟はしていましたが不合格の知らせはつらかったです。国公立大だけと決めていたし、浪人する覚悟もありませんでした。情けないことですが、志願書を出すとき後期試験を受験する気力は残っていないだろうと思っていたので、後期はセンターの得点で合否が決まるお茶の水女子大学理学部物理学科にしていました。合格の知らせには、うれしさと安堵(あんど)でへなへなと力が抜けました。

宇宙が大好きで

 小さい頃から“隠れ目立ちたがり屋“だった私は、自分にしかできないことを見つけようとしていたところがありました。ひらめいたのが、芸能界に行くことと、大好きな宇宙のことについて知ることでした。高2の終わりの進路志望調査で、第一志望「芸能界」と書いて、その唐突すぎる発表に母と先生を驚かせてしまいました。三者面談で「大学に行ってから好きなことをすればいい」と言われ、だったら「大学で宇宙を学ぼう」と思いました。

 中学のとき、アメリカ航空宇宙局(NASA)を見学する機会があり、そのときから宇宙のとりこでした。大学3年のときには、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が宇宙飛行士の募集していることを知り、応募したこともあるんです。実務経験など募集要項を満たさないのにもかかわらずです。熱意だけで何とかならないかと思って。この話を宇宙飛行士の星出彰彦さんにお話ししたら「僕も大学生のときに応募を考えたんですよ」とおっしゃっていて。偶然にも同じことをした方が夢を実現されてうれしかったですね。

今の環境を大切に

 高3の6月にダンス部を引退してからは勉強漬けで、家と学校と予備校の3点を移動する日々でした。予備校が繁華街にあってキラキラした女子を見るとうらやましかった。

 当時「かわいい」ことに興味津々だった私は、机に鏡を置いて前髪や顔をやたらチェックしていました。今思うと痛すぎますし、第一そんなので勉強に集中できるはずありません。そういう気持ちの間は成績が伸びませんでした。

 ただ、2人の兄が勉強法を教えてくれたり、両親のサポートだったり、支えられて勉強ができていることを考えるようになって成績が変わりました。神戸だったので、阪神大震災のことも心のどこかにありましたね。今の生活は決して当たり前じゃない、苦しいのは自分だけじゃない。みんな苦しさを乗り越えて強くなるんだと、そう思えたのです。

 受験生の時は、どこの大学に行くか、何を専門とするかでその後の人生が決まってしまうのでは、と不安でした。人生の大きな選択のように思えました。でも、決してそうではありません。大切なのはその選択のあと、自分が何をするかだと思います。

 私は今、憧れていた芸能界で宇宙に関するお仕事もしています。高校時代より夢にも宇宙にも近づきました。

 今しかできない受験勉強を、精いっぱいやり遂げてください。極限まで追い込んだ自分を褒めてあげられる日がきっと来ます。受験生のみなさんに光が差し込みますように。応援しています。

     ◇

 くろだ・ありさ 神戸市出身。兵庫県立長田高校卒。タレント。NHK Eテレ「高校講座 物理基礎」に出演中。お茶の水女子大物理専攻の先輩でアナウンサーの加藤シルビアさんと、宇宙や物理学の魅力について対談した「宇宙女子」を1月下旬に出版予定。27歳。(聞き手・佐々木洋輔)

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