捨てられそうな輪島塗、預かり新たな使い手へ 能登の夫婦が橋渡し

有料記事能登半島地震

安田琢典
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 能登半島地震の被災地でひと組の夫婦が、処分されそうな輪島塗の食器を預かり、使ってくれる人を探して譲渡する取り組みを進めている。家屋が倒壊し、思い出や伝統が詰まった品々さえ手放さざるを得ない現実。持ち主の思いと、土地ならではの文化を次世代につなごうという試みだ。

 住宅をはじめ9千棟超の建物被害が確認されている石川県能登町。この町で生まれ育った船下智香子さん(54)と、夫でオーストラリア出身のベンジャミン・フラットさん(58)は町内で民宿「能登イタリアンと発酵食の宿 ふらっと」を営む。

 フラットさんのイタリア料理は、伝統的な発酵調味料の魚醬(ぎょしょう)「いしり」や近くの漁港で水揚げされたイカなどの魚介類、自ら育てた野菜や果物といった地場の食材をふんだんに使う。輪島塗の器に盛りつけられ、宿泊客らの人気を呼んできた。

廃棄される現実、痛んだ心

 地域の食文化や伝統を大切に…

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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2024年5月5日17時0分 投稿
    【視点】

    保管場所を失って思い出が詰まっているものや長く生活とともにあったもの、まだ使えるものを“手放したくないけれど、手放すしかない”、“本当は手放したくないけれど、誰かに使ってもらえるなら手放せる”というようなつらい思いに寄り添う貴重な取り組みだ

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能登半島地震

能登半島地震

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