「二極化」進む子どもの運動習慣 苦手でも競争意識しない遊びに成果

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【遊ばない子どもたち】

 遊びのような運動も含めて、体をほとんど動かさない子どもや、スポーツをしない子どもが増え続けている。新型コロナウイルス感染対策による行動制限がなくなったあとも、その傾向が続いているというデータもある。こどもの日に合わせて、現状を探った。

 宮城県角田(かくだ)市は、小学校入学前の子どもたちに遊ぶ習慣を身につけてもらおうと力を入れている。

 きっかけは、少子高齢化や人口減少が進む中で、市内にある道の駅と隣接する総合スポーツ施設を拠点にして、スポーツを核とした交流人口を増やそうとしたことだった。地域の課題を洗い出す過程で、そもそも、体を動かす機会が減るなどして、運動する子としない子とに「二極化」していることがわかった。現場の保育士らからも「遊ばない子が増えた」という声が多く上がった。

 そこで2019年、市や市スポーツ協会、仙台大学などが「スポーツネットワークかくだ」(スポネットかくだ)を設立。翌年から「かくだ版アクティブ・チャイルド・プログラム」に取り組んできた。

 プログラムは三つあり、目玉は5カ所の保育園や幼稚園などに通う子どもたちを対象とした講座だ。各園で年3回開かれ、競争をなるべく意識しない遊びをする。例えば、「いす取りゲーム」や「鬼ごっこ」ではなく、自分のしっぽを取られてもコート外のしっぽを回収して再び加われる「しっぽ取り」をする。しっぽを取られても終わりではないので、運動が苦手な子も楽しめる。

 中島保育所の菅野喜代美保育士によると、講座の日を「休みたくない」と話す子が増えたという。「他人と争う遊びより、達成感を得られるからだと思います。私たち保育士にもどんな遊びをすればいいのか気づきがあった」

 プログラムを検証している笹川スポーツ財団の保護者アンケートでは「体を動かして遊ぶようになった」が20年度(94人回答)の13.8%から22年度(206人回答)は19.9%へと増加した。また、子どもとの遊びの種類が増える傾向にあるなど、効果が出ている。

 プログラムは今年で5年目になる。総合型地域スポーツクラブ「NPO法人スポーツコミュニケーションかくだ」のクラブマネジャーで、「スポネットかくだ」の遠藤良則・地域スポーツ推進マネジャーは「市内の保育園・幼稚園などが公立私立の垣根なく参加して、横のつながりができたのが大きい」。課題として、子どもたちが小学生になった後も、地元のスポーツ少年団やスポーツクラブなどでスポーツに親しみ続けるかどうかを挙げる。「中学校の部活動の地域移行が進む中、その前の段階で子どもがスポーツとどう関わりを持てるか、データを残しながら取り組んでいきたい」と話している。

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 体を動かす遊びやスポーツをしない子どもが増えています。どんな背景事情があるのか、探ります。お子さんや保護者らの体験談やご意見をt-sports-dept@asahi.comメールするまでお寄せください。(笠井正基)

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