穴開けて風速と知名度アップ 苦境のうちわ業界に新風

紙谷あかり
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 香川県丸亀市周辺で生産され、うちわで全国トップシェアを誇る伝統的工芸品「丸亀うちわ」の風速アップに取り組むメーカーがある。新型コロナウイルスの感染拡大で、夏祭りや花火大会の中止が2年続けて相次ぎ、うちわの出番は減少。苦境にあえぐ地場産業に、新風を吹かせようという試みだ。

 開発したのは、丸亀市の隣、まんのう町の「紙工芸やまだ」。山田時達(ときさと)社長(49)が昨年、広島大付属高校(広島市)の生徒がうちわの風速について研究していることを知り、協力を求めた。

 生徒たちは、竹やポリプロピレンでできた骨組みを選び、うちわの紙の部分に大きさや形、位置の異なる穴を開けて風速を比較した。その結果、持ち手が太く、丸い形で竹製の「唐月型うちわ」に六つの丸い穴を一列に開けると、風速が1・16倍になることが分かった。

 「これまでデザインのために穴を開けたことはあったが、機能のことを考えたことはなかった」と、山田社長も驚いた。

 うちわの名前は「2・3KNOTS(トゥーポイントスリーノッツ)」。風速が名前になっている。

 記者もあおいでみた。穴の開いていないものと比べると、わずかに風が強く感じるような気もするが、微妙だ。

 山田社長は「実は、体感レベルではよくわからない。『なんじゃそら』と思って、丸亀うちわのことを少しでも知ってもらえたら」と話す。

 「トゥーポイントスリーノッツ」には、丸亀うちわを広く知ってもらいたいという山田社長の願いが込められている。「400年続いてきた産業を400年先も続くようにしたい」

 今後、紙工芸やまだが運営するECサイト「うちわ屋涼」(https://uchiwayaryo.com/別ウインドウで開きます)で4千円前後で販売する予定だ。(紙谷あかり)

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