コロナ危機、ハラリ氏の視座 「敵は心の中の悪魔」

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 新型コロナウイルスによる感染症の脅威に世界中がすくんでいる。私たちはどう立ち向かうべきなのか。人類史を問い直し、未来を大胆に読み解く著作で知られるイスラエル歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリさんが電話でのインタビューに応じた。今まさに分かれ道にさしかかっている、と言う。

ユヴァル・ノア・ハラリ氏<br>ヘブライ大学教授・歴史学者。 1976年、イスラエル生まれ。邦訳書に「サピエンス全史」「ホモ・デウス」「21 Lessons―21世紀の人類のための21の思考」。

 ――ウイルスの感染拡大で、私たちはどのような課題に直面していると考えますか。

 「世界は政治の重大局面にあります。ウイルスの脅威に対応するには、さまざまな政治判断が求められるからです。三つの例を挙げてみましょう」

 「まず国際的な連帯で危機を乗り切るという選択肢があります。すべての国が情報や医療資源を共有し、互いを経済的に助け合う方法です。他方で、国家的な孤立主義の道を選ぶこともできる。他国と争い、情報共有を拒み、貴重な資源を奪い合う道です。どちらの選択も可能で、政治判断に委ねられています」

 「また、ある国はすべての権力を独裁者に与えるかもしれない。独裁者がすでにいる場合もあれば、新たな独裁者が生まれる場合もあります。一方で、別の国では民主的な制度を維持し、権力に対するチェックとバランスを重視する道を選ぶでしょう」

 「最後の例は、経済についての政治判断です。企業を救うためには政府の介入が必要ですが、すべての企業を助けることはできない。ある政府は、大企業を救うことを選ぶでしょう。しかし別の政府は、石油や航空会社が潰れても、小さなレストランや理髪店などを助けることもできます」

 「すべてにおいて決まった答えはなく、政治に委ねられます。だから私は現状が医療だけでなく政治の重大局面だと定義するのです」

強さ求める国民、慎重な政府

 ――独裁と民主主義のうち、どちらが感染症の脅威にうまく対応しているでしょうか。

 「日本や韓国、台湾のような…

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