「新聞離れ」「テレビ離れ」といわれて久しく、また、SNSなどの情報源が多出するなかでマスメディアの意義はくり返し問われています。そんなマスメディアの意義や価値のひとつともいえるのが、調査報道です。

調査報道とは、放っておけば埋もれたままになってしまうかもしれない問題を、記者が独自の調査・取材で明らかにして報道すること。調査報道によって初めてスポットが当てられ、是正の方向に向かった、あるいは是正を求める声が上がるようになったことも少なくありません。

本記事では、調査報道によって世にでることになった「真実」を特集した連載四つをご紹介。普段はあまりフォーカスが当たらないジャーナリズムの軌跡に迫ります。

目次

    いまなお続く「天下り」、官僚OBの人事介入問題

    ニュースでよく耳にする「天下り」という言葉。

    「天下り」とは、中央省庁の公務員(官僚)が、退職後に省庁と関係がある企業などに再就職すること。今回、そういった「天下り」の問題のなかから、「国土交通省OBによる空港施設への人事介入問題」に迫ります。関係者への取材や入手した記録をもとに、この問題の実態と背景を描いています。全12回の連載です。

    令和の天下り 官僚OBの人事介入

    「バックにいる人たちがどう思っているかということなので、それをおかしいと言われても私自身は答えようがないんですよ」

    「人事権への介入じゃないですか」「国交省の奴隷って言われているのに近い」

    東京オリンピックの開幕を控えた2021年の春。東証1部上場(現・東証プライム上場)企業の人事を検討する会議で、国土交通省OBの役員とほかの役員との間で、こんなやりとりが交わされていた。

    本連載では、事実関係はどうなのか、なぜ始まったのか、あっせんを禁じる法の改正とそこに残された抜け穴など、さまざまな角度からこの問題を探っていきます。

    無実を証明するための闘い 冤罪(えんざい)がもたらしたもの

    もし、あなたが突然、無実の罪で逮捕されたら?

    「噴霧乾燥機」を扱うメーカーである大川原化工機株式会社。噴霧乾燥機とは、液体を粉に加工する機械で、カップラーメンのスープ用粉末や粉末コーヒーを作る際に使用されています。同社は国内でトップシェアを誇っていました。

    しかし、事態は急変。社長の大川原さんと、役員の島田さん、顧問の相嶋さんの3人は、突如として逮捕されることになります。まったくの無実ながら家宅捜索などが行われ、勾留期間はなんと11カ月以上。本連載では、その不当な逮捕に立ち向かい無罪を訴え続けた闘いの日々を、5回に分けて書き記しています。

    冤罪はこうしてつくられた 大川原化工機事件を追う

    始まりは2018103日だった。

    午前7時過ぎ、大川原正明さん(72)は社長を務める会社に向かおうと、横浜市の自宅を出た。そこで、男たちに声をかけられた。

    「外為法違反です。令状、出てますんで」

    男らは警視庁公安部の捜査員を名乗った。

    「何の件ですか」

    大川原さんは驚きながら尋ねたが、彼らは「捜査の秘密ですから言えません」と答えるだけ。自宅の家宅捜索が始まった。

    逮捕・捜査に翻弄される会社の様子や、社員や弁護士らが実験を通じて無実を証明していった一部始終だけでなく、起訴が取り消されたあとに国と東京都に対して行った損害賠償を求める訴訟とその結末などもリアルに描かれています。

    朝日新聞の調査報道をきっかけに多くの人に知られることになった本問題。連載の最後には、元裁判官の法政大法科大学院教授(刑事法)・水野智幸氏に、この捜査の問題点を聴いています。

    国による統計の不正を暴いた調査報道の裏側

    「不正」はどのように暴かれるのか。

    2021年末、「国土交通省の統計書き換え問題」を報道した朝日新聞。本連載では、そのスクープが結実するまでの半年の様子を、全5回にわたり記しています。

    統計不正はどう暴かれたか

    2021年の梅雨が明けきらぬころ。朝日新聞社会部の調査報道班の記者らが、ある不満の声に触れた。

    都道府県の現場には、統計のことで国に不満がある。最近も国と少しもめた。建設分野の、受注の関係だ――

    自治体や専門家への取材で、数々の問題が次々と明らかに。緊張感のある文で描かれた内容を通して、普段フォーカスされることのない調査報道の裏側を知ることができます。

    消滅は2037年まで続く見通し 消えた郵便貯金

    「むかし郵便局に預けた貯金が、ある日突然消えてしまった」

    かつての郵便貯金を失って途方に暮れる利用者が後を絶ちません。実は、これには民間の金融機関にはない、郵便貯金特有の「制度」が関係しています。本連載では、さまざまな人の貯金が消えた体験談とともに、この問題に焦点を当てています。

    消えた郵便貯金

    走行距離が25万キロを超えた軽自動車ムーヴを新車のタントに買い替えようと、思い出の深い貯金を下ろそうとしたときのことだ。

    「とにかくお金は返せません。貯金は払い戻せません。これは法律ですから」

    青森県十和田市の郵便局で若い女性局員に貯金証書を突き返され、看護師の女性(55)は頭が真っ白になった。ある日を境に貯金が消滅するという恐ろしい法律を初めて知ったのは、2021年秋のことだった。

    お金を預けた日のことは、今でもよく覚えている――

    この郵便貯金特有の制度は、認知が広まっておらず、いまだに消滅していく定額郵便貯金がある状況です。消滅した権利の復活をめぐる状況や、そもそも貯金が消滅する制度自体の意義など、さまざまな角度からこの問題を探っていきます。

    報道されなければ、知られることがなかった「真実」

    天下り、冤罪、統計の不正、そして貯金の消滅。いずれも抗議の声を上げずにはいられない問題ですが、その実態が報道されなければ知ることさえできません。

    これらの問題に気づき、事実を追求するために資料を集めた記者たちによる調査報道は、人々が不正を知り、それについて考える重要な判断材料となります。あなたがもう一歩深く「真実」に向き合う良いきっかけとなるはずです。

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