お金のこと、仕事のこと……。「大人になって社会に出れば、自然と全部わかるようになる」と思っていませんでしたか?

しかしいざ大人になると、「こんなこと学校で習わなかった! わからない!」と、内心思うことはありませんか?

新聞は、社会の“今”を知って、お金や働き方といった身近で大切なことを学ぶ絶好の教材になるかもしれません。朝デジから、そんな記事を紹介します。

目次

    学校で習わなかったこと:「税金」の仕組み

    イラスト:朝岡 遊

    毎月の給与から引かれている所得税や住民税。税金が道路や水道の整備といった公共サービスに使われていることは広く知られています。ただ、どれだけのお金が必要で、どのように使い道が決められているのかは、実際のところわからないこともあるのではないでしょうか。

    税理士、元東京国税局職員というキャリアのお笑い芸人、東京都杉並区長の3人に、税に関心を持つことの大切さを聞きました。

    (耕論)税金、考えてますか 内田麻由子さん、さんきゅう倉田さん、岸本聡子さん

    税理士の内田麻由子さん。

    「ニッポン株式会社のモノ言う株主になろう」

    「働く人の圧倒的多数を占める会社員が、無関心で、黙って納税してくれることは、集める側にはとても都合がいいでしょう」

    「金も出すけど口も出す」ことを言い続けてきた内田さんのお話には、税金を「託す」ことができる社会にするためのヒントがあるはずです。

    お笑い芸人のさんきゅう倉田さん。

    元東京国税局職員というキャリアのさんきゅう倉田さんは、源泉徴収についてこう言います。

    (源泉徴収の)「デメリットとして税金のリテラシーが低くなるという指摘があります。所得税や住民税をどれだけ払っているか、税率はどれくらいか、累進課税の仕組みはどうなっているか、などを把握している人は多くないでしょう」

    手元にお金が入る前に引かれている源泉徴収だと、「自分のお金を税金として納めている」感覚が得られにくいのは確か。だからこそ私たちは、普段からお金の話をして、その仕組みを知ることに努めたいですね。

    杉並区長の岸本聡子さん。

    区長選で「公共の再生」を訴えたという岸本さん。

    市民の公共への信頼や公共との関係性を作り直していくことは、納税の納得感にも大きく影響するでしょう」

    「市民一人ひとりは、主権者ではなく『消費者』という存在になっているように感じます。行政サービスに対して、『自分がどれだけ得をするか』というポイント感覚になってしまっている」

    税に対する無関心は、公共への無関心にもつながってしまう可能性があります。私たちは今、税と公共の関係性を見つめ直す必要があるのかもしれません。

    学校で習わなかったこと:「社会保険料」の仕組み

    毎月の給与から支払われているものには、税金のほか、社会保険料もあります。社会保険とは、けがや病気、失業などで働けなくなったときにも安心して生活を送れるように設けられた仕組みで、健康保険や厚生年金保険、雇用保険などがあります。

    いざというときを思えば必要な制度と理解しつつも、この保険料、家計を支える程度に稼ぎたい人にとっては頭の痛い問題。一定の収入を超えると保険料を支払わなければならないからです。

    ちまたでは「年収の壁」として話題にはあがるものの、自身がどの条件に当てはまるのか? 扶養を外れたら結局、収入と支出のバランスはどうなるのか? よくわからないという声も聞こえます。

    【そもそも解説】年収の壁、課題は?「働き損」をなくすには?

    この記事では、社会保障に詳しい野村総合研究所の武田佳奈研究員に、社会保険の加入条件や、いわゆる「働き損」(保険料の発生により、「年収の壁」を超える前より手取り額が減ってしまうこと)などについて聞きました。

    記事では、「働き損」とならないために行なっている就業調整の実態や、「働き損」をなくすためには年収を4割増やす必要があることなどを解説しています。

    (就業時間を4割延ばすこと)「『そこまではしたくない』と思う人は多いと思います。そこに働き損を解消しにくい理由の一つがありました」

    政府は壁の解消に向けた支援策を検討していますが、単身者との間に不公平が生じるなどの課題も抱えています。朝デジでは、この記事以外にも「年収の壁」問題について取り上げています。関連記事を読み比べながら、理解を深めていくのもおすすめです。

    学校で習わなかったこと:働き方と人生設計

    あなたの働く組織で、ほかの年齢層と比べて50歳前後の新卒で入社した正社員が少ない、もしくは、この世代の管理職が抜け落ちている、などと感じたことはありませんか?

    その世代は、就職氷河期世代と呼ばれています。就職活動が雇用環境の厳しい時期と重なったため、正社員を諦め、契約社員や派遣社員といった非正規雇用で社会に出る人が少なくなかったのです。

    それから20年以上が経った現在、少子化が加速する一つの要因となって、影響が表れています。

    「子なしは、私だけの責任なのか」 氷河期世代がいま抱える思いは

    この記事は、連載「子どもがいないとダメですか? 『異次元の少子化対策』の陰で」からの1本です。

    世代による働き方や人生設計の違いには、世相が大きく反映されています。就職氷河期世代には、仕事や収入の不安定さから結婚や子どもを持つことを先送りにしたり、諦めたりした人たちがいます。そんな世代にスポットを当て、資格取得を図ってもキャリアや収入に反映されずもどかしさを感じたり、体外受精の高額な医療費を前に子どもを諦めたりした、当事者の声を紹介しています。

    政治もようやく就職氷河期世代に向けたキャリア支援や不妊治療の保険適用などの対策に踏み切ってはいますが、当事者からすれば遅きに失した感は否めません。世代間ギャップや社会の理不尽を真正面から受けた世代でもあり、果たして自己責任で片づけてよいのかと、疑問が残るところでしょう。

    “知ること”が私たちの暮らしを守るすべとなる

    複雑で難しそう、面倒くさそうと敬遠しがちなことでも、その意義や成り立ち、仕組みを知ることが、私たちの暮らしを守るすべになるかもしれません。記事を通じ、身近で大切なことに触れてみてはいかがでしょうか。


    ホームへ戻る

    Share

    おすすめ記事

    Recommend