医師の私が毎年、インフルエンザワクチン接種する理由

内科医・酒井健司の医心電信

酒井健司
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 毎年恒例ですが、今年もインフルエンザワクチンを接種しました。ワクチンはインフルエンザ対策の基本です。重症化だけではなく感染も予防します。WHOのサイトには明確に「ワクチンはインフルエンザの感染および重篤な合併症を予防するもっとも効果的な方法です」と書いてあります。

 私の勤務している病院では、ほぼ全職員がインフルエンザワクチンを受けます。ちなみに費用は病院から出ますので個人の負担はありません。一日で全員は接種しきれませんので、2週間かけて順番に打ちます。私は先週の火曜日、11月12日に受けました。

 アレルギー等の事情があって接種できない人を除いて、医療関係者はインフルエンザワクチンを接種することが推奨されています。外来にはインフルエンザの患者さんがたくさんいらっしゃるので感染する機会が多いですし、インフルエンザに感染すると重症化するリスクの高い、高齢者や糖尿病などの持病のある患者さんとも接します。

 もともと健康な成人がインフルエンザにかかっても、ほとんどの場合は自然に治ります。しかし、リスクの高い患者さんはインフルエンザから二次性の肺炎などの重症な合併症を起こしやすく、死亡にいたることもあります。リスクの高い患者さんご自身にもワクチンを受けていただきますが、インフルエンザワクチンの効果は100%ではなく、ワクチンを受けても感染することはあります。周囲の人たちもワクチンを接種して、少しでもインフルエンザに感染する可能性を低くすることが大切です。医療関係者がワクチンを接種するのは、自身がインフルエンザにかからないことに加え、患者さんを守るという目的もあるのです。

 ワクチンだけがインフルエンザ対策ではありません。せきやくしゃみの飛沫(ひまつ)によって感染することは知られていますが、手指を介して感染することもあります。感染した人のくしゃみやせきで口を手で押さえたときにウイルスが混じった鼻水や唾液(だえき)が手に付くと、ドアノブや手すりを介して別の人の手にウイルスが移ります。そして目や鼻などの粘膜を触ると感染します。こうした接触感染を防ぐにはこまめな手洗いが有効です。速乾性のアルコール消毒剤でもかまいません。

 ワクチンや手洗いといった対策を行っていても、感染してしまうこともあるでしょう。インフルエンザが疑われる症状のあるときには出勤・登校を控え、病院を受診するなどの外出の際にはマスクを着用してください。くしゃみやせきをするときには、素手ではなくティッシュやハンカチなどで口を覆ってください。とっさのときには袖で口を押さえましょう。それから、なによりも、十分な睡眠や栄養のある食事といった生活習慣が大事です。

《酒井健司さんの連載が本になりました》

これまでの連載から80回分を収録「医心電信―よりよい医師患者関係のために」(医学と看護社、2138円)。https://goo.gl/WkBx2i別ウインドウで開きます

<アピタル:内科医・酒井健司の医心電信・その他>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/sakai/(酒井健司)

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酒井健司
酒井健司(さかい・けんじ)内科医
1971年、福岡県生まれ。1996年九州大学医学部卒。九州大学第一内科入局。福岡市内の一般病院に内科医として勤務。趣味は読書と釣り。医療は奥が深いです。教科書や医学雑誌には、ちょっとした患者さんの疑問や不満などは書いていません。どうか教えてください。みなさんと一緒に考えるのが、このコラムの狙いです。