(社説)ジャニーズ謝罪 これで幕引き許されぬ
創業者による性暴力疑惑が浮上しているジャニーズ事務所が、おととい初めて謝罪した。
事務所の公式サイトで藤島ジュリー景子社長が登場する1分ほどの動画を公開し、被害を訴えている人やファンらに対しておわびを表明。さらに、これまでに寄せられた10の質問に対する回答として、社長の見解を記した文章も合わせて掲載した。
当のジャニー喜多川氏が故人であるため、事実関係の確認が難しい▽事務所や社長は性加害について知らなかった▽被害の相談を受けるため、専門家の指導のもと月内に外部窓口を設ける――といった内容だ。
事務所はこれまでこの問題について正面から見解を述べることを避けてきた。ファンからも疑念の声が上がるなか遅きに失したが、ようやく世間に説明をしたことは一歩前進といえる。
だが、そのやり方は、納得がいくものとはほど遠い。
まず、なぜ記者会見を開いて社長が直接、疑問や批判に答えようとしないのか。公開した文章は質問に回答する形をとっているが、実際には一方的に言いたいことを並べたにすぎない。
喜多川氏の性加害について、事務所は知らなかったとの主張ひとつとっても説得力を欠く。いったいどんな調査をした結果、そう結論づけたのか。
第三者委員会による調査はしないと明言していることも見逃せない。
ヒアリングを望まない人が調査対象になる可能性が大きく、慎重を期すべきだと専門家から指導を受けたからだというが、理解に苦しむ。性暴力の被害についての調査に、しかるべき配慮が必要なのは当然だ。しかしだからこそ、当事者として利害関係のある事務所ではなく、第三者による独立した調査が必要なはずだろう。
多くの未成年が長期にわたって重大な人権侵害にさらされていた可能性のある深刻な事態である。広く大衆を相手に影響力の大きい事業を手がけてきたジャニーズ事務所には、ひときわ重い社会的責任が課せられていることを改めて自覚すべきだ。
藤島社長は公開した文章で、エンタメ業界は特殊であるという甘えを捨て、コンプライアンス強化を進めていると述べた。だが、今回の事務所の対応は、まさに「甘え」そのものだ。内向きな体質は変わっていないと言わざるをえない。そのような体質こそが、長年にわたって疑惑が見過ごされる土壌となっていたのではないのか。
記者会見を開き、調査は独立した第三者委に委ねる。経営刷新を強調するなら、具体的な行動で示す必要がある。これで幕引きを図ることは許されない。
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- 【視点】
■ジャニーズ批判の幕引きは許されない 朝日新聞がジャニーズ事務所を満腔の怒りを込めて弾劾している。1面記事に天声人語、社説、さらに複数の面に記事が並んでいる。朝デジにもトップ画面に特集を設置している。この社運をかけたジャニーズ批判キャン
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