核融合、エネルギー増やせた クリーン発電へ一歩、米「歴史的」

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 二酸化炭素を出さない将来のクリーンエネルギー源として期待される核融合技術について、米国が大きな進展を発表した。レーザーを使って太陽内部と似た核融合反応を起こし、投入したエネルギーを超えるエネルギーを得たという。今回は小規模で実用化まで多くの課題があるが、核融合発電に一歩近づいた。

 原子力発電所では、ウランなどの原子核を分裂させる核分裂によってエネルギーを発生させる。一方、核融合では、水素といった原子核が融合する際に出るエネルギーを利用する。

 米ローレンス・リバモア国立研究所のチームが実験したのは、強力なレーザーを一点に集めて超高温、超高圧の状態をつくり、水素をヘリウムにする「レーザー核融合」という手法。2・05メガジュールのエネルギーを供給すると、3・15メガジュールの出力が得られたという。投入したエネルギーの約150%にあたる。昨年夏の段階では投入量の70%の出力だった。

 ただ、得られたエネルギーは、やかん数杯分の水を沸かす程度。実用化には多くの課題が残る。それでも収支がプラスに転じたとして、米エネルギー省は13日の記者会見で「歴史に残る画期的成果」と発表した。大阪大学レーザー科学研究所の藤岡慎介教授は「これでレーザー核融合の原理が実証できたことになり、発電に向けて大きなステップとなる。国内でもレーザー研究に取り組もうという機運が高まってほしい」と話した。(合田禄=ワシントン、吉備彩日)

 ■様々な方式、実用化へ各国競争激化

 レーザー核融合は、クリーンなエネルギー源として期待される「核融合発電」の一つの方式。このほか、核融合を起こすためのプラズマを磁場コイルでつくる「トカマク型」などがある。

 国は、米欧や中国、インドなどが参加するトカマク型の国際プロジェクト「国際熱核融合実験炉(ITER)」の主要メンバーとして2025年の稼働をめざす。経済産業省も、7月に示した「次世代革新炉」のロードマップ案で、高温ガス炉や高速炉など五つの技術の一つに位置づけた。

 核融合発電は、実用化が「21世紀中ごろ」とされるにもかかわらず国際競争が激化している。量子コンピューターなどと同様、社会や国家のあり方を一変させる「ゲームチェンジャー」の可能性を秘めているからだ。米核融合産業協会などの昨年の報告書によると、核融合開発にかかわる世界の主要23社が調達した資金が2千億円を超えるなど投資も過熱気味だ。国内でもベンチャー設立などの動きが活発化している。高市早苗・科学技術担当相は9日の会見で「エネルギー安全保障にも資する将来のクリーンエネルギー。戦略を策定して国際競争を勝ち抜く気概が重要」と述べた。(嘉幡久敬)

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