(社説)噴火予知連 持続可能な体制整えよ

社説

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 火山噴火予知連絡会の「50年に1度の大改革」が進められている。継続して観測や研究ができる仕組み、次世代の専門家の育成策を整えねばならない。

 気象庁長官の私的諮問機関の噴火予知連は、火山現象の総合的な判断などを目的に約半世紀前、74年に発足した。大学や関係機関の専門家で構成され、86年の伊豆大島噴火や00年の有珠山噴火などで防災に貢献。活動評価や研究情報の交換、専門的な提言なども続けてきた。

 火山噴火は、予知も推移の予測も技術として確立しておらず、研究者の知見に依存する要素が大きい。しかし、国立大学の法人化と運営費交付金の削減で、人員も予算も縮小してきた。今の組織や任務を維持していくことが難しくなってきた。

 一方、御嶽山噴火後、気象庁では火山関連の職員が従来の160人から280人程度に増やされ、研修制度も充実された。

 改革では、火山活動の日常的な活動評価を気象庁が行い、非常時は専門家の知見を集めて対応する方向で調整されており、来年度からの移行を目指す。

 日本は有数の火山国ながら、火山学者は少なく、「絶滅危惧種」とまで言われてきた。現状を踏まえれば、この改革は時流に沿ったものだ。

 いくつか課題がある。ひとつは平時から緊急時への円滑な移行。学者が速やかに補完できる体制にすべきだ。知識や経験が足りないと変化の兆候を見逃したり軽く見たりで重要な判断が遅れる恐れもあり、問題が見つかれば常に見直す必要がある。

 火山の観測や研究を持続させ、専門家の育成を続ける体制づくりも課題だ。専門家からは、地震調査研究推進本部のような火山の観測や研究を一元的に進める司令塔が必要と指摘されている。今は新組織を作る機運は盛り上がらずとも、火山大国である以上、いずれ社会が切望する時が来るはずだ。それまで望ましい組織や観測、研究のあり方の検討を続け、できることから実行するべきだ。

 火山災害は頻度が低く、普段は重要視されにくいが、足元を固めねば危機に対処できない。

 御嶽山の噴火後、従来16火山だった重点観測研究の対象が25火山になったが、機器の更新や臨時観測点の設置にとどまり、恒久的な施設を増設できたのは2火山に過ぎない。まず、政府の確実な予算配分が必要だ。

 過去に繰り返されながらも、ここ100年以上はなかった大規模噴火の恐れも指摘される。海外の活発な火山で研究や経験を積むなど、専門家の維持と高度化を進めなければならない。平時の地道な備えの大切さは、新型コロナでも学んだはずだ。

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