(社説)寺田総務相 責任逃れは許されぬ

社説

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 自身に関係する政治団体の問題なのに、関与や責任を否定するだけの答弁からは、真摯(しんし)な反省はうかがえない。「政治とカネ」の問題に厳しい視線を向ける国民など眼中にないかのようだ。寺田稔総務相政治資金を所管する省庁トップの責務を自覚しているのか、甚だ疑問だ。

 閣僚の政治資金をめぐり、国会で野党の追及が続いている。

 寺田氏と秋葉賢也復興相がそれぞれ代表を務める政治団体が、妻ら親族に事務所の賃料を支払っていたことが週刊誌の報道で判明。野党は政治資金を身内に還流させるファミリービジネスだと批判している。

 両氏は適正な対価であり、問題はないと繰り返すが、公私混同と見られても仕方あるまい。事務所としての実態や賃料の水準などについて、説明を尽くさねばならない。

 これに加え、寺田氏には、政治資金収支報告書そのものの信頼性を揺るがす事態が明らかになった。広島県竹原市の地元後援会の19、20年の報告書の会計責任者に、故人が記されていたのだ。寺田氏は死亡の事実が事務の担当者に伝わっていなかった「連絡ミス」と説明したが、きちんとチェックされていたのか、疑わざるを得ない。

 政治資金規正法は、会計責任者らが代わった際は、7日以内の届け出を義務付けている。報道で指摘されるまで、3年間も放置していたとは、ずさん極まりない。事務所や後援会全体に、政治資金報告を軽んじる空気があったのではないか。

 寺田氏は自分は後援会の代表ではなく、「事務処理について指示・監督する立場にない」と、責任逃れに終始している。故人の記載についても、規定違反は認めながら、「罰則規定はない」と開き直った。

 だが、後援会が寺田氏の政治活動を支えているのは明白だ。政治的、道義的責任も顧みず、法律に違反しなければ構わないと言わんばかりの態度が、政治資金を所管する大臣にふさわしいとは誰も思うまい。

 起用した岸田首相の責任も重い。寺田氏は自民党岸田派に属し、選挙区も同じ広島である。総務相就任前、首相補佐官を務めるなど、近い関係にあるだけに、なおさらだ。

 首相の判断が問われるのは、山際大志郎前経済再生相の処遇もそうだ。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係をめぐって、事実上、更迭したはずなのに、その4日後に党の新型コロナ対策本部長に就任させるとは、驚くほかない。閣僚のままでは国会で追及され審議に支障があるので、党の役職で処遇したということか。これでは到底、国民の支持は戻るまい。

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