「質高い論文5年で1千本」認定基準に 「国際卓越研究大学」文科省案

 世界トップレベルの研究力をめざす大学を支援する10兆円規模の大学ファンドについて、支援を受けられる「国際卓越研究大学」の認定基準に「質の高い論文数が直近の5年間で1千本程度以上」などが盛り込まれる方針だ。文部科学省が基本方針案を公表し、10月13日まで意見公募を行っている。

 国際卓越研究大学と認定され、大学ファンドの運用益から年数百億円を受け取れるのは、数校程度とされている。基本方針案では、大学を認定する判断基準として、具体的な条件をいくつか示した。

 まず、質の高い論文の目安とされる、ほかの論文に引用された回数が上位10%に入る「トップ10%論文」の数が、直近の5年間で1千本程度以上あること。さらに、論文の総数のうち、トップ10%論文の割合が10%程度以上となっていることだ。

 または、大規模な大学以外も応募できるように、研究者1人あたりのトップ10%論文数が0・6本程度以上という基準だ。

 担当者によると、これまでの実績よりも将来性を重視する方針で、応募がトップレベルの大学だけに限定されることがないよう、低めに設定したという。

 文科省が出版・学術情報サービス会社「エルゼビア」(オランダ)のデータを分析したところ、2016~20年の5年間のトップ10%論文数は、東京大5920本▽京都大3977本▽大阪大2663本▽東北大2404本▽名古屋大2113本▽九州大2092本▽北海道大1687本▽筑波大1585本▽東工大1559本▽慶応大1276本▽早稲田大922本などとなっている。

 「1千本程度以上」を満たすのは、十数校と見られる。

 方針案では他にも、民間企業などからの研究資金の受け入れ額が直近5年間で年平均10億円程度以上となっていること、または、研究者1人あたりの受け入れ額が100万円程度以上となっていることなども基準にしている。若手や女性、外国人研究者の登用状況も見る。

 国際卓越研究大学に選ばれた場合、ファンドによる支援期間は最長25年で、6~10年ごとに支援継続の可否を判断することなども方針案に盛り込まれている。

 公募は年内に始め、大学側の準備期間も考慮して数カ月間行う。審査は、研究現場を視察するなど対話をして進め、文科相が総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)などの意見を聴いて認定する。実際の支援開始は24年度以降になる。藤波優