夏休みを利用して、大学生が関心のある企業などで実際に働いてみる「インターンシップ」が本格化している。

 参加者の多くは3年生で、今年の場合、入学時からコロナ禍に見舞われ、様々な制約を受けてきた若者たちだ。インターン体験を採用選考に組み込んでいる企業は少なくない。不安を抱える学生の立場にたった、丁寧な対応を心がけてほしい。

 大学生の就職活動に関しては、新卒一括採用の前提で「企業説明会は3年生の3月、選考は4年生の6月に解禁」という政府主導のルールがある。ただし罰則はなく、インターンに参加した学生に、早めに事実上の内定を出す例が増えている。

 政府は、企業がインターンとして受け入れた学生の情報を、その後の採用選考に使うのを認めてこなかった。しかし6月に方針を変え、来年から「3年生以降の長期休暇中に実施する」「参加期間(所要日数)は5日間以上」「就業体験を必ず行う」といった条件を満たせば、認めることにした。現状を一部追認した格好だ。

 この夏はまだ施行前だが、例年以上にインターン活動に力を入れる学生が目立つという。

 留学やサークル活動、アルバイトなどの経験を十分に積めず、就職希望先に提出する書類に記載する「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと)の不足を心配する学生が、自分の特徴や強みを直接売り込む好機と考えているようだ。

 学生が就業体験する意味は大きい。社員らとともに仕事に取り組むことで、その企業や仕事の内容が自分に合っているかを確認できる。知識不足を実感して、さらに学ぼうという意欲につながることもあるだろう。

 ところがリクルートの調査では、現4年生が参加したインターンの87%は期間が1日以下で、うち75%は就業体験がなかった。「5日以上」は全体の2%に満たない。これでは、学生が自身の適性を見きわめるのは難しいだろう。

 受け入れ内容を充実させるには相応の労力が必要なため、及び腰の企業が多い。一方で、最近は大卒新入社員の3割が3年以内に離職している。ミスマッチが減り、長く働く社員が増えれば、企業にとってもメリットは大きい。インターンに手間をかける意義はあるはずだ。

 学業こそ学生の本分であることを踏まえたうえで、新しいインターン制度を上手に活用していきたい。学生の評価基準をわかりやすく説明し、募集・選考の時期や方法を複線化することも、避けて通れない課題だ。多様な人材を確保できるかどうかが、企業の将来を左右する。