(社説)コンビニ判決 「対等」へ改善続けよ

社説

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 コンビニチェーンに加盟する個々の店主の立場は、本部の大企業と比べ、なお弱い。対等な関係に改善する取り組みは道半ばだ。コンビニ各社には、店主と共存共栄できる仕組みを整えていく責任がある。

 大阪府東大阪市のコンビニ店の営業をめぐる裁判の判決が大阪地裁であった。セブン―イレブン・ジャパンが店主との契約を解除したことの是非が問われていた。判決は、店主の接客態度に問題があったとする会社側の主張を認めた。元店主は控訴する方針だ。

 両者の対立は、3年あまり前、人手不足などを理由に店主が深夜営業をやめたのが引き金だった。自らも店頭に立つコンビニ店主の過酷な労働実態や厳しい経営状況が、社会的に注目されるきっかけになった。

 裁判の行方とは別に、本部と加盟店とのフランチャイズ契約がはらむ問題への対策がどこまで進み、どんな課題が残っているのか、不断に検証することが必要だ。

 この件が生じて以降、対応は政府主導で進んだ。経済産業省が設けた有識者会議は、24時間営業の短縮や休業日の設定について「店舗の実情に応じた柔軟な対応」を求めた。

 公正取引委員会は、加盟店へのアンケートを踏まえ、独占禁止法上の問題になりそうな事項について各社に自主点検と改善、報告を要請した。加盟契約に関する指針を改正し、時短を望む店主との協議を拒んで不利益を与えれば「優越的地位の乱用」にあたると指摘している。

 これらを受けて、セブンを含む各社は24時間営業にこだわらない姿勢を示し、時短を望む店主と協議してきた。ただ、実現した店舗は、大手で3~4%余にすぎず、店主には「本部にはものを言いにくい」との声が根強い。24時間営業を強いる社内の仕組みや雰囲気がないか、各社は改めて点検すべきだ。

 ほかにも課題は山積みだ。本部による近隣への強引な新規出店、人件費上昇分をもっぱら店主が負担する仕組み、消費期限が迫った商品の値引きや廃棄に伴う負担のあり方――。いずれも会社側の立場と権限が店主より強いことが根本にある。

 「社会インフラ」を掲げる一方で、こうした不均衡が放置されてはならない。各社の姿勢が厳しく問われている。

 フランチャイズ契約は、コンビニだけではない。他の小売業や飲食店、学習塾などでも一般的だ。加盟店と本部の対等な立場の確保は、共通する懸案である。弱者の泣き寝入りが起きることのないよう、新しい法制度の必要性も含め、議論を深めていきたい。

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