(社説)骨太の方針 防衛費の膨張が心配だ

社説

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 防衛費をはじめとする歳出の拡大に歯止めがかからなくならないか。きのう閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)からは、こんな不安が拭えない。

 骨太の方針は、翌年度の予算編成の大枠にあたり、政府の重点政策を挙げつつ、財政健全化に向けた考え方を示してきた。今回も「財政健全化の旗を下ろさず、これまでの目標に取り組む」と記し、国と地方の基礎的財政収支を25年度に黒字化する目標を維持した。

 25年度には、団塊世代全員が75歳に達し、医療費などの公費負担が一段と膨らむ。それまでに、借金依存の財政運営から脱する意義は大きい。コロナ禍を経ても企業業績は堅調で、税収は増えている。目標を維持するのは当然の判断だ。

 一方で、見過ごせない問題がある。目標達成の前提になる歳出抑制を形骸化させかねない表現が加わったことだ。

 従来の骨太では、社会保障経費の伸びを高齢化による自然増の範囲内に、その他の経費は3年間で計1千億円の伸びに抑えるとしてきた。今回も、この方針自体は変えなかったが、決定前日の自民党との調整で「ただし、重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」との文言が入った。抑制の例外を認めるかのような表現だ。

 歳出を増やすべき「重要な政策」があるのは否定しない。ただ、その際はその分の財源を同時に議論すべきだ。歳出拡大だけを言うのでは「財政運営」の名に値しない。

 とくに懸念するのは、安倍元首相らが国内総生産の2%以上にするよう求める防衛費の扱いだ。この「重要な政策」の一つとして念頭にあるとされる。

 ロシアのウクライナ侵略が起きたなかで、あるべき防衛の姿を考えることは当然だ。ただ、適切な予算は、装備など必要な経費を積み上げて検討すべきで、「2%」のように総額ありきの議論は筋違いである。

 安倍氏は「政府は日本銀行とともに、お札を刷ることができる」など財政規律を軽んじる発言も連発している。骨太が「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」としながら財源には触れず、歳出の別扱いにする余地までつくったのは、安倍氏らに配慮したためだろう。

 1947年施行の財政法は、赤字国債の発行を禁じている。野放図な借金が身の丈を超えた軍事予算の拡張を許し、悲惨な戦禍を招いた反省からだ。政府の借金は、すでに未曽有の規模に膨れあがっている。このうえ歯止めなき国債発行を続けて、際限のない軍拡競争を招くようなことは、あってはならない。

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