(社説)旧文通費の使途 公開先送りは許されぬ

社説

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 「今国会中に得る」と約束した「結論」が、まさか、先送りではあるまい。政治家が「第2の財布」として事実上自由に使える現状を改めるには、使途を公開し、広く国民の監視の下に置くことが必須だ。与野党は15日の会期末までに、必ず法改正を実現しなければならない。

 国会議員に月100万円が支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費=文通費)の見直しのことである。与野党の実務者協議は、使い道の透明化と未使用分の国庫返納について結論を得られないまま、先週打ち切られた。週内にも国会対策委員長会談を開いて、対応を検討するという。

 予想された展開ではある。見直しの1丁目1番地が使途の公開であることは歴然としていたのに、各党は在職日数に応じた日割り支給への変更を先行して、4月に関連法を改正した。透明化は宿題として、会期中に「結論を得る」としたが、与党の消極姿勢は明らかだった。後回しになった時点で、実現を危ぶむ声があった。

 先の法改正では、文通費の名称と目的を変えることによって、使途が事実上拡大されてもいる。このまま透明化が見送られれば、第2の財布にお墨付きを与えるも同然だ。

 実務者協議では、何に使え、何に使えないかの基準づくりも議論されたが、大筋で一致したのは「選挙費用は対象外」くらい。公の議員活動を支えるための費用を選挙に使うべきでないのは当然で、この程度しか合意できないとは驚くばかりだ。

 また、いくら使途に枠をはめても、公表されなければチェックのしようがない。地方議員が調査研究活動のために使う政務活動費については、領収書を付けた収支報告書をネットで公開する議会も多い。国会議員だけが、既得権益にあぐらをかき続けることは許されない。

 旧文通費の透明化は、昨秋の衆院選後に浮上し、昨年末の臨時国会から持ち越された課題である。またも先送りが繰り返されるなら、国民の政治不信は募るばかりだろう。

 にもかかわらず、各党の危機感は薄い。岸田首相(自民党総裁)は先月末の衆院予算委員会で「(期限を)区切って議論をすることではない」と述べた。野党第1党の立憲民主党は、先週発表した夏の参院選の公約に「使途報告・公開制度の整備」を盛り込んだ。最後まで今国会での実現をめざそうという強い意思は感じられない。

 今のまま参院選で国民に審判を仰ごうというのか。政治の責任を果たすために、与野党のリーダーが決断し、指導力を発揮すべき局面だ。

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