(社説)日米豪印会合 包摂の秩序が目標だ

社説

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 大国の思惑ではなく、ルールにもとづく秩序づくりが世界で求められている。クアッドは、その外交努力をインド太平洋地域で率先する枠組みとして活用していきたい。

 日米豪印4カ国による首脳会合が東京で開かれた。リアル会議としては昨秋のワシントン会合以来だったが、ロシアの侵略により国際環境は一変した。

 共同声明などによると、会合はウクライナの「悲劇的な人道的危機」を論じ、力による威嚇や現状変更を認めない決意を確認したという。

 同様の事態をアジアで起こさせないためには何が必要か。4カ国が「国際法に従って紛争の平和的解決」を追求すると誓った意義は小さくない。

 声明には中国もロシアも国名が記されていないが、4カ国の念頭にこの二つの強権大国があるのは明らかだ。ただし、日米豪とインドとの間では、認識にかなりの差がある。

 インドは歴史的にロシアと関係が深いうえ、全方位外交を旨とする国だ。それでも今回、モディ首相が国家主権と領土の一体性の尊重で同調したのは、強い危機感ゆえだろう。

 6月下旬のドイツでのG7サミットには、インドも招かれている。西欧諸国も新たな秩序づくりにインドを引き込みたいからだが、逆に日米欧もインドに謙虚に耳を傾けたい。

 会合の冒頭でモディ氏はあえて、包摂的な地域づくりの重要性に触れた。確かに、クアッドは排他的な枠組みであってはならない。欧州の東西対立のような分断をアジアにもたらさないために、あくまで中国を巻き込む秩序を目標とすべきだ。

 4カ国は、東南アジア諸国連合との連携を強める意思を示したうえ、今後5年間に500億ドル(約6兆3千億円)以上のインフラ投資をめざすことも表明した。

 中国の「一帯一路」を意識して、債務と貧困に悩む発展途上国への支援を強めるものだ。さらに、災害対応のための衛星情報の提供や、感染症、気候変動対策など広い分野での協力を打ち出した。

 実際、気候危機や戦乱などによりアジア各地の人びとが厳しい生活を強いられている。民主主義や法の支配などの価値観を根付かせる前提として、人道支援や貧困解消に取り組むのは賢明なアプローチだろう。

 アジアには、欧州のような強い地域機構はまだ存在しない。だからこそ、新たな経済圏など緩やかな多国間枠組みを重層的に積み上げ、一歩ずつ秩序づくりを進めるのが現実的な道だ。クアッドは、その公正な推進役をめざしてほしい。

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