(ウクライナ侵攻)滞る輸出、不安な作付け 有数の穀物輸出国、海上封鎖=訂正・おわびあり

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 世界有数の穀物輸出国であるウクライナの西部で、小麦やトウモロコシの作付けが始まっている。ただ、ロシア軍による海上封鎖に伴い、主要な輸出手段である海運が機能せず、昨年収穫した穀物の一部が出荷できていない状態だ。戦争が長引けば輸出がさらに滞り、世界の食料価格の高騰に拍車がかかる恐れがある。▼1面参照

 12日、ウクライナ西部リビウから北に約60キロの町チェルボノフラード郊外の小麦畑を訪ねると、見渡す限り緑色の苗が広がっていた。苗はまだ10センチほどだが、8月ごろには収穫期を迎えるという。

 農場を営むのはウクライナ西部を拠点とする企業「ザヒドニー・ブフ」。約6万4千ヘクタールの農地で小麦、大麦、トウモロコシ、テンサイ(サトウダイコン)などを作る。

 同社で約1万ヘクタールの農地を担当するチームの責任者イェブヘン・ジムールさん(45)は、空襲警報の鳴る農場で「我々に必要なのは平和だ。今年の作付けは何とかなるが、戦争が続けば、来年はどうなることか」と不安を漏らした。

 ロシア軍のウクライナ侵攻が農業に与えた影響は甚大だ。米農務省の統計によると、世界の小麦輸出量の約3割、トウモロコシ輸出量の約2割をウクライナとロシアが占めているが、侵攻後は供給不安が広がって穀物価格が跳ね上がった。

 同社では一部の従業員が徴兵されたほか、外出禁止令によって労働時間も制限された。種や殺虫剤を調達するために、ロシア軍の激しい攻撃を受けていた首都キーウ(キエフ)近郊の村まで行ったこともあった。

 最大の問題は、海上輸送が断たれていることだ。侵攻開始以降、同社の穀物の大半が通るはずだった南部オデーサ港が封鎖された。予定通り出荷ができず、いまも約2万5千トンのトウモロコシが倉庫に眠ったままだという。

 ウクライナ経済省によると、同国の3月のトウモロコシ、小麦、ひまわり油、大豆の輸出量は前月と比べて4分の1に激減した。同省は「ロシアはウクライナの輸出を阻止することで、経済に打撃を与えようとしている」と声明で訴えた。

 同社商業部門の副部長、セルヒー・シホルスキー氏は取材に、「ポーランド経由での陸送を試みているが、輸送が殺到している」と説明する。また、ウクライナと欧州連合(EU)では鉄道の軌道の幅が異なるため、輸送はスムーズに進まないという。「倉庫に穀物が残っている状態で、次の収穫後の出荷もできないとなると、農業経営はいっそう厳しくなる」と話した。(チェルボノフラード〈ウクライナ西部〉=遠藤雄司

 <訂正して、おわびします>

 ▼29日付国際面「滞る輸出 不安な作付け」の記事と写真説明で、ウクライナ西部の作物について「サトウキビ」とあるのは、現地で栽培が盛んな「テンサイ(サトウダイコン)」の誤りでした。取材時の通訳の過程で誤認しました。現地の作物に関して確認が足りませんでした。

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