(社説)物価高対策 負担分かち合う戦略を

社説

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 政府は、ロシアのウクライナ侵攻で加速した物価高に対応する緊急対策をまとめた。対策は必要だが、税金の使い方として重大な問題がある。

 国費6・2兆円に及ぶ緊急対策の柱は、ガソリン価格を抑える補助金の拡充だ。期限を4月末から9月末に延長。額も積み増し、目標価格を引き下げる。

 朝日新聞の社説は、ガソリン価格の形成に政府が介入し続けることを批判してきた。値上がりで自然に需要が抑えられる働きを妨げ、脱炭素社会にも逆行するからだ。燃費の悪い大型車を持つ富裕層にも大きな恩恵が及び、所得分配をゆがめかねないといった側面もある。

 あくまで緊急避難であり、困窮する消費者や事業者に的を絞った支援策を整えるまでの時限措置にとどめるべきものだ。にもかかわらず、期間を延長し補助金も増やす今回の決定は、安易なバラマキ政策と言わざるを得ない。

 加えて見過ごせないのは、政府案に明記されていた「今年度上半期に限った措置」との文言が、与党の反対であいまいにされたことだ。毎月数千億円もの国民負担が発生する政策である。「参院選対策」だとすれば、言語道断だ。

 一方で、肝心の困窮者対策には不十分さが否めない。低所得の子育て世帯には子ども1人5万円が給付されるが、子育て世帯以外の困窮者は対象外だ。

 燃料高騰は電気やガス料金のさらなる上昇につながる。ガソリン以外の必需品を含めた価格高騰の負担を、所得に応じてきめ細かく緩和する方策の検討こそ急ぐべきだ。コロナ禍を受けて、マイナンバーを用いた給付用口座の登録も始まっている。その活用も一考に値する。

 緊急対策は財源面でも大きな問題を抱える。追加投入される2・7兆円の過半を、使途を事前に国会が議決しない予備費でまかなうからだ。国会会期中の予備費乱用は、憲法が定める財政民主主義を無視する暴挙である。コロナ対策を掲げていた予備費を原油高対策に安易に拡大するのもありえない判断だ。改めて政府与党に撤回を求める。

 原油価格が高騰すれば、無資源国の日本が経済的打撃を受けるのは避けられない。政治に求められるのは、厳しい現実を直視した上で、消費者と企業、政府の間でどう負担し合うかの戦略を示し、国民に協力を呼びかけることだ。

 誰もが痛みを避けられるバラ色の結果は実現できない。賃上げやコスト上昇分の適正な価格転嫁の実現を含め、付加価値の適正配分を掲げる看板政策「新しい資本主義」の真価が今こそ問われている。

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