(社説)重点措置解除へ 再拡大への備え 確立を

社説

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 新型コロナの重症者は減少に転じ、病床使用率も改善傾向にある。ただ、新規感染者の水準は依然として高く、いつ上昇に転じてもおかしくない。岸田首相がめざす社会経済活動の再開には、身近で検査や診察を受け、速やかに治療につなげられる態勢の確立が何より重要だ。

 東京、大阪など18都道府県を対象とした「まん延防止等重点措置」を、政府が全面解除する方針を決めた。1月初めに沖縄など3県に適用され、最大36都道府県に拡大された措置は、2カ月半ぶりになくなる。

 政府は、病床使用率が50%超でも、感染者が減少傾向なら解除を可能とするなど、基準を緩和したうえで今回の対応に踏み切った。このまま延長しても、収束が見通せないのは確かだ。しかし、人の動きが活発になる年度替わりを前に、解除できなくなる事態を避けたかったというのが実情ではないか。

 警戒を怠らず、次の「波」も見据えて、この間の対応から教訓をくみとらねばならない。

 オミクロン株による第6波のクラスター(感染者集団)は、高齢者施設や学校、保育園で多発し、飲食店は一部にとどまる。そのため、営業時間の短縮や酒類提供の自粛要請を中心とする重点措置の実効性には、一部の知事や政府分科会のメンバーらから疑問が呈された。

 むろん、重点措置が出されているからこそ、多くの企業や団体がテレワークや出社制限、会食の自粛などに努めており、その効果は見逃せない。しかし、飲食店対策そのものの有効性は、政府の責任できちんと検証されるべきだ。

 施設の入居者を含め、高齢層に感染が広がった結果、1月以降の死者は約8千人にのぼり、これまでの流行で最多となった。この事実は重い。苦境に立つ施設が孤立することのないよう、医師や看護師らによる訪問診療や職員の応援派遣に手を尽くしてほしい。

 発熱外来が混雑し予約がとれない、自力で検査しようにもキットが入手できない、という事態も相次いだ。治療につなげるという目的以外にも、濃厚接触者の社会復帰やエッセンシャルワーカーの活動維持に検査は不可欠だ。幅広い用途に十分応えられる体制づくりが望まれる。

 オミクロン株のように、入院や重症化のリスクが相対的に低い場合でも、際限なく感染が広がれば、その分、重症者や死者も増える。一人ひとりが、感染リスクの高い行動を避け、基本的な予防策を日常生活の中に定着させる。流行の規模や被害を最小限にとどめるには、そうした意識を社会全体で共有し、実践していく必要がある。

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