(社説)教員不足調査 働き方改革待ったなし

社説

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 学校の先生が足りず、このままでは子どもたちの学びに大きな支障が出る。文部科学省の初めての調査で、そんな危うい状況が全国に広がっていることがわかった。

 背景にあるのは若者の教員離れだ。原因は様々だが、長時間労働などの厳しい職場環境が報じられ、社会問題化したことが大きい。仕事に魅力を感じて教職を志す人が増えるように、国、自治体、学校が協力して対策を強める必要がある。

 調査によると、予定どおりの教員配置ができなかった公立の小中高と特別支援学校は、昨年5月1日時点で全体の約5%にあたる1591校あり、計2065人の欠員があった。

 詳しく見ると、小学校で学級担任が474人不足し、校長や教頭らが代役を務めた。中学校では16校で教科担任が不在で、授業が一時実施されなかった。

 少人数や習熟度別の指導を進めるため、自治体などが独自に上乗せする教員枠も含めての数字だ。法律上の定員は満たしているとはいえ、このままでは教育の質の維持や学校運営が立ちゆかなくなる恐れがある。

 大量採用されたベテラン層が退職して若手の割合が高まり、当然の結果として産休や育休をとる者が増えた。朝から夜遅くまでの勤務や保護者の苦情対応に起因する精神疾患などで、年代を問わず休職者も多い。

 これまでは、正式採用に至らなかった人を臨時に任用するなどして穴を埋めてきた。しかし近年は、採用枠が増える一方で受験者数が伸びず、合格しやすくなったため、代わりを頼める人材が減った。教員のOB・OGを急きょ雇って、当座をしのいでいるところも多い。

 各教育委員会は、採用試験の年齢制限を外したり、音楽や体育の実技試験をやめたりして、受験者を増やそうと工夫している。文科省も学習指導などに協力してくれる退職者や塾講師らを登録する「人材バンク」を設置。他業種で働く教員免許状保有者を呼び込もうと、オンライン教材の開発にも取り組む。

 しかしこうした施策だけで切り抜けられる話ではない。給与を含めて労働環境の改善を図らなければ、優秀な若者を安定して集めることはできない。

 不要な事務作業の削減や行事の見直し、免許をもたない社会人でも教壇に立てる「特別免許状」制度を活用した外部人材の登用などを着実に進めるべきだ。部活動の指導者の受け入れをはじめとする、地域との連携強化も欠かせない。

 今回の調査を踏まえ、長時間労働と教員のなり手不足という負の連鎖を断ち切る取り組みに、本腰を入れてもらいたい。

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