(社説)北朝鮮ミサイル 「瀬戸際」許さぬ結束を

社説

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 愚かな行動を繰り返し、ただでさえ苦境に立つ現状を、自ら悪化させようというのか。

 北朝鮮は新年に入り、日本海に向けて弾道ミサイルを相次いで発射している。

 最初の2回は、音速の何倍もの速さで飛び、変則的な軌道で迎撃を難しくする「極超音速ミサイル」だと称している。その後、「戦術誘導弾」とするミサイルを立て続けに発射した。

 北朝鮮は昨年1月に開いた朝鮮労働党大会で、兵器システム開発の長期計画を示している。それに沿った行動であり、周辺国の安全に危害を与えていないと主張する。

 だが弾道ミサイルの発射は、明確な国連安保理決議違反である。たとえ落下が日本の排他的経済水域の外でも、航空機や船舶の被害が心配される。危険な行動を直ちにやめるべきだ。

 新型コロナへの警戒感から国境をほぼ封鎖してきた北朝鮮は最近、中国からの物資搬入を2年ぶりに再開した。困窮が長びき、背に腹は代えられぬということだろう。

 そんな状況にもかかわらず、危機感をあおって目先の状況を変えようという、いつもの瀬戸際戦術にあきれるばかりだ。

 国際社会は決して座視しない姿勢を結束して示す必要がある。しかし個別の外交事情が絡む歩調の乱れがめだつ。

 安保理は会合を開いても、ミサイル発射を非難する声明すら出せていない。中国とロシアが同意しないためだ。

 北京五輪を控えた中国は、事態を荒立てたくない思惑もあるだろう。だが、北朝鮮の最大の後ろ盾であることの責任を忘れてはならない。ロシアも、北朝鮮の最近のミサイルがロシア製と酷似している事実を重く受け止めるべきだ。

 日本政府は、米国や韓国と緊密な調整のもとで対応するのが最善だ。米国は独自の追加制裁を科しつつ、対話再開を北朝鮮に呼びかけている。

 韓国が求めていた朝鮮戦争の終戦宣言は事実上、立ち消えとなった。しかし、北朝鮮を対話に引き戻す努力を怠ってはならず、日米韓はもっと意思疎通を深めるべきだ。

 北朝鮮の挑発を受け、日本の一部政界では、敵対国の領土内を攻撃する能力を持とうという議論が活発化し、岸田首相も検討を表明している。

 北朝鮮のミサイルの性能水準は詳しく解明されておらず、攻撃能力の有効性をめぐっては専門家らから疑問が出ている。

 軍拡競争をエスカレートさせれば、地域の安全保障環境はさらに悪化するだろう。冷静かつ実効性のある安保外交政策を練るのが政府の務めである。

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