(社説)大人の自覚 育む責任「大人」にこそ

社説

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 きょうは成人の日。

 長らく大人すなわち20歳以上という扱いが定着していたが、6年前に18歳から選挙権が与えられるようになり、この4月には民法上の成年年齢も18歳に引き下げられる。

 節目の年にあたり、当事者に大人としての自覚をもってもらうのは当然として、ではそのために大人の側は何をすべきで、何ができるのか。あらためて考える機会にしたい。

 4月からは、18歳になれば保護者の同意なしに、自由に契約を結べるようになる。若者の必需品のスマホの利用しかり、マンションやアパートなどの賃貸しかり。一方で、契約をかわした以上はその取り消しなどは簡単にできなくなる。

 あわせて、18~19歳でも刑事裁判にかけられる範囲がひろがり、また、重大な刑事事件を審理する裁判員の候補者にも選ばれる可能性が出てくる。

 諸制度の切り替えを前に、消費者トラブルなどに巻きこまれないようにと、注意を促す呼びかけは盛んだ。だが「大人としての自覚」を促す取り組み全般となると、心もとないのが実際のところではないか。

 4月から実施される高校の新学習指導要領は、主権者として社会を担う力を育む新科目「公共」を必修とする。教室での学びは大切だが、実際に社会に参画し、物事を多様な角度から考える経験をすることは、それ以上の効果が期待できるだろう。

 格好のテーマのひとつになり得るのが成人式だ。

 酒を飲んで騒ぐ者がいたり、晴れ着姿を披露する場になったりしていることに眉をひそめ、開催を疑問視する声もある。しかし、多くの若者が「わがこと」として関心を寄せるイベントだからこそ、「参画」の第一歩に位置づけてはどうか。

 もちろん現在の状況に即していえば、感染症対策など大人の責任で決めるべきことは多い。だが開催の時期や内容、さらにさかのぼって式典を開く意義や必要性、対象年齢を高校生の世代に議論してもらい、自治体はそれを尊重するという動きが、もっとあっていい。

 若者が出した結論に問題があると思えば、首長らがその理由を説得力のある言葉で説明し、再考を働きかける。そうしたキャッチボールも、若者にとって将来の糧となるだろう。

 「18歳成人」が決まった時、成人式をどうするかも話題になったが、当事者の声を聞いて反映させようという動きはあまり見られなかった。大人の側がこれまでの思考や行動様式を見直し、対等な社会の構成員として若者に向き合う。そうしてこそ、大人の自覚は醸成される。

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