(社説)巨大地震想定 地道な対策が命を守る
北海道から東北北部の太平洋沖で最大級の地震が起きれば、大津波が発生して最悪19万9千人が犠牲になる。そんな想定を先ごろ政府がまとめた。
たじろぐような数字だが、あきらめずに基本的な対策を地道に進めることが、多くの命を救う。心して備えを固めたい。
東日本大震災後、「想定外」の事態を避けようと地震の規模の見直しが進んでいる。問題の地域では、300~400年ごとに大津波が繰り返されてきたことが痕跡調査で判明。前回は17世紀のため、危険が「切迫している」と評価された。
発表によると、マグニチュード9クラスの地震が起きると、北海道や東北北部に最大で30メートル近い津波が押し寄せる。死者の数の推計は、日本海溝の地震では約6千~19万9千人、千島海溝だと約2万2千~10万人となっている。
幅があるのは季節や発生時刻で被害が大きく異なるためで、最悪の想定は「冬の深夜」だ。余震もあって大地が長時間揺れるなか、防寒着を着込み、積雪や凍結によってただでさえ通りにくくなっている道路を逃げなければならない。
それでも、対策を講じていれば犠牲者を約8割減らせるとの試算も、あわせて公表された。そのためには自治体による津波避難タワーの建設、避難ビルの準備、公共施設の耐震化などが欠かせない。ハード面だけでなく、地域の避難計画や一人ひとりのタイムラインの策定、高齢者らをサポートするシステムづくりなども求められる。
こうした事業を進めるにはお金がかかる。政府・国会は関連法令の改正も視野に、予算の確保をはじめ、支援体制の構築に万全を期さねばならない。
津波から逃れることができても、屋外にいる時間が長ければ低体温症で命を落とす恐れがある。想定では最大約4万2千人分の対策が要るとされた。避難所に備蓄している防寒グッズなどの点検・更新も怠らないようにしてほしい。
3・11を思い起こせば明らかなように、津波はがれきや自動車など漂流物とともに、何度も襲来する。浮かんで助けを待つことなど期待できない。避けるには安全な高台で生活するか、急いで逃げるしかない。避難場所と経路を確認しておくのはもちろん、様々な季節や時間帯を想定した訓練が命を守る。
北日本の太平洋沿岸にかぎらず、日本列島に住んでいれば大地震の恐れはどこにでもある。住宅の耐震化、家具の固定、非常用持ち出し袋の用意、家族との連絡方法の確認など、いつも言われている対策を、改めて点検する機会としよう。
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