(社説)オミクロン株 急拡大に機動的対応で

社説

[PR]

 経路不明のままオミクロン株に感染した人が、各地で相次いで見つかっている。いつ、どこで急拡大が起きてもおかしくない。当面は封じ込めに全力を挙げつつ、そうした事態も念頭に準備に万全を期したい。

 政府は市中感染が起きている地域を対象に、無料で検査を受けられるようにする方針を打ち出した。既に独自に始めている自治体もある。検査会場などの情報の周知を図りながら、機会の確保に努めてほしい。

 同株は欧米で驚くべき勢いで増えている。日本でも陽性者の待機施設で勤務する、感染防止策に通じているはずの検疫職員の感染が複数報告されている。伝播(でんぱ)力の強さを示唆する話だ。再発防止に努めるのはもちろん、得られた知見を今後の施策に反映させることが大切だ。

 ワクチンを接種済みの人の感染も目立ち、発症予防効果は従来株に比べてかなり落ちるとのデータもある。3回目接種の前倒し実施が決まったものの、一般の高齢者で本格化するのは来年2月以降になりそうだ。

 この追加接種が行き渡る前の「波」の到来は回避したいが、最悪の事態を想定した備えは必須だ。限られた医療従事者や施設を有効活用するには、機動的な判断が求められる。

 例えば政府はオミクロン株について、濃厚接触者の定義を広げ、施設待機を求めている。初動対応としては適切だったが、その数は増える一方で、管理にあたる自治体や保健所の大きな負担になりつつある。

 感染が急拡大した時、本来の業務である入院・宿泊療養先の調整や、自宅にとどまる感染者の健康観察に手が回らないようでは困る。早め早めに対処し、診療所や薬局、訪問看護ステーションなど、地域の医療資源の力を借りることが不可欠だ。

 またオミクロン株感染者は無症状でも入院させているが、それで病床が逼迫(ひっぱく)し、必要な治療を受けられない人が出てしまっては本末転倒だ。感染状況を見ながら、こうした措置も適宜見直していく必要がある。

 感染すれば、無症状であっても一定期間は仕事を休まざるを得ない。このため海外では、医療をはじめ、さまざまな公共サービスや社会経済活動に支障が出ることが懸念されている。入院できずに自宅で亡くなる人が相次いだ第5波の時とは、また違う形での社会混乱が起きる可能性も視野に、政府は危機管理にのぞまねばならない。

 人の動きが活発化し、最も警戒すべき年末年始を前に、再びみたび不安が社会を覆い始めている。混乱を抑えるため、心に届くメッセージを発信することもまた、政治の役目である。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

連載社説

この連載の一覧を見る