(社説)新変異株 監視と封じ込め徹底を

社説

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 新型コロナの新たな変異株が見つかり、世界各地から感染者の報告が相次ぐ。

 南アフリカで最初に確認されたこのウイルスは「オミクロン株」と名づけられ、現地では従来の変異株からの置き換わりが急速に進んでいると伝えられる。感染力がより強く、既存のワクチン効果が低下する可能性も指摘される。まずは最新の知見をもとに、冷静にリスク評価をしていくことが重要だ。

 政府はきのう、全世界を対象に当面の間、外国人の新規入国を原則として停止すると発表した。先週末に南アとその周辺国からの入国者について水際対策を強化したばかりだが、欧州など他国の対応もにらみながら、一気に踏み込んだ。

 様々なルートを経て、どこからオミクロン株が持ち込まれてもおかしくない状況だ。毒性をはじめウイルスの性質がはっきりしない以上、「緊急避難的な予防措置」(岸田首相)をとるのはやむを得ない。変異株の脅威を甘く見て、有効な対策をとらずに感染を広げてしまい、社会経済に大きな傷を残した過去の失敗に学ぶときだ。

 一方で、ウイルスの解明が進み、門戸を開く環境が整った際には、速やかに実行できるよう準備しておくことも忘れてはならない。留学生などの受け入れに必要な事務作業や審査は継続し、あわせて関係者に対し、今後の見通しや対応を丁寧に説明することが求められる。

 これまでのウイルスの流行の経緯を振り返ると、オミクロン株がすでに国内に流入している可能性も否定できない。

 現在は、PCR検査などで陽性反応があった者から採取したウイルスを、ゲノム解析に回さなければ株の特定はできず、数日間かかる。これをリアルタイムでチェックできるように態勢を整えたうえで、徹底した接触者調査を行うことが、封じ込めには不可欠だ。

 12月早々から始まる「3回目のワクチン接種」への影響も懸念される。

 ファイザー、モデルナ両社のワクチンは、接種から一定期間を過ぎれば発症予防効果が低下することがわかってきた。このため、2回目接種からの間隔を「原則8カ月以上」としつつ、状況に応じて「6カ月」に縮められるとする基準が、厚生労働省から示されたばかりだ。

 既存のワクチンはオミクロン株にどの程度有効か。追加接種する意義に変わりはないか。新たなワクチンが開発されるとしたら、入手までにどれくらいの時間を要するか。国はそうした情報を迅速かつ適切に収集・発信し、自治体の作業に支障が出ないよう努めねばならない。

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