(社説)コロナ対策 確実な実践が問われる

社説

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 次の感染拡大に備えた、政府の新型コロナ対策の「全体像」が先日示された。

 医療提供体制の強化を進め、それでも通常医療に支障が出る事態になれば、「強い行動制限を機動的に国民に求める」と明記。岸田首相が掲げる「最悪を想定した危機管理」を踏まえた内容になっている。

 根拠なき楽観論に走り、入院できないまま亡くなる人が相次いだ前政権の失敗を繰り返してはならない。施策を確実に実践し、国民の生命を守るという、政治の責務を果たすことに全力を挙げてもらいたい。

 「全体像」によると、今月末までに入院できる患者数を夏のピーク時よりも3割増やし、以後、医療機関ごとに病床の確保状況や使用率を毎月公表する。ベッドに空きがあっても、支えるスタッフがいなければ意味がないことを、これまでの経験は教えている。感染拡大時にどう機敏に対応するか。日ごろ都道府県と医療機関とで認識を共有しておくことが欠かせない。

 逼迫(ひっぱく)時には国の権限で、都道府県境を超えて医療人材を融通するという。ここでも、互いがどんな状況でどう動くか、シミュレーションを重ね、遺漏のないようにするべきだ。

 費用の無料化など検査環境の整備も盛り込まれた。

 想定しているのは、健康上の理由などでワクチンを接種できない人が社会経済活動を行うための検査と、感染拡大の傾向がある時に無症状者に対して行う検査のふたつだ。詳細はこれから詰めることになる。

 どんな目的や規模でPCR検査を実施するかは、コロナの流行開始時から議論があり、自治体が独自に行う例もあった。また、その場で判定できる抗原検査キットが9月から薬局で買えるようになったが、どう活用したらいいのか、必ずしも明確ではない。検査に関する政府の統一的な考え方が求められる。

 医療従事者に続いて、来年1月から高齢者へのワクチンの追加接種が始まり、その後も拡大していく。引き続き市区町村が会場の手配や人員の確保、予約受け付けなどの実務を担う。

 接種の時期は2回目の接種から8カ月以降とされていたが、厚生労働省はきのう、6カ月以降に前倒しすることも可能だとした。計画の見直しを迫られる自治体も出てくるだろう。国は供給スケジュールを早めに確定・伝達して、初回時のような混乱を避ける必要がある。

 米国では12歳未満への接種が始まった。日本はどうするのか。これも関心の高いテーマだ。国は迅速かつわかりやすい情報発信で、市民の疑問や不安の解消に努めてほしい。

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