(社説)水道「民営化」 懸念の解消しっかりと

社説

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 宮城県議会で先月、水道事業の運営権を20年間、民間事業者に与える議案が可決された。2年前に施行された改正水道法で導入された仕組みを使った全国で初めての試みとなる。

 人口減少などで水の使用量が減り、料金収入の減少が見込まれる一方、老朽化した水道管や施設の更新費用などが必要で、多くの自治体で水道事業を取り巻く環境は厳しい。宮城県は、民間の技術やノウハウを活用してコストを削減し、将来の水道料金の値上げを抑えたいとしている。

 ただ、暮らしに欠かせない水道事業を民間に委ねることに不安を抱く人は少なくない。すでに下水道で同様の方式を導入済みの浜松市も、上水道では「住民の理解が得られていない」として検討を延期した。大阪市では、理解が得られやすい老朽管の交換業務と工業用水に絞っての導入を検討中だ。

 人口減社会で、安全な水の安定供給体制をどう維持するのか。住民の不安に応え、丁寧に説明しながら進めてほしい。

 宮城県が導入するのは、自治体が施設の所有権を持ったまま運営権を民間に売却する「コンセッション方式」と呼ばれる手法だ。これまでは自治体が事業認可を手放さなければならなくなるため、水道事業での導入例はなかったが、改正水道法で自治体が認可を持ち続けることが可能になった。

 県は、運営権を売却後も水質検査などは引き続き担い、水道料金についても契約の中でしっかりとルールを決めると強調する。それでも住民説明会では「事業者任せにならないか」などの声が相次いだ。

 大事なことは、約束通りに事業が実施されているか、事業者の経営状況に問題はないかなどを、自治体が十分に監視し、情報を公開することだ。モニタリングの実効性を高め、住民の懸念を解消しなければならない。

 そもそも民間事業者が参入するのは利益が見込める都市部が中心とみられ、こうした手法で全国の水道事業が持続可能になるわけではない。過疎地などの課題解決には、市町村の枠組みを超えた広域連携こそ重要だ。

 施設を共有したり点検作業を一緒に行ったり、できることから速やかに着手しなければならない。本格的に連携するには、水道施設の計画的な更新や中長期の収支の見通しなどを把握しておくことも必要になる。

 改正水道法では、こうした施設の管理に必要な台帳の整備を義務づけたが、小規模の自治体では対応が遅れ気味だ。台帳整備への財政支援など、自治体の取り組みを後押しすることにも力を入れたい。

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