(社説)コロナ宿泊療養 危機克服に強化を図れ
新型コロナの感染爆発が止まらない。きのうの東京都のモニタリング会議で感染症の専門家は「制御不能な状況」と述べ、医療提供体制は「深刻な機能不全に陥っている」と指摘した。
楽観論を振りまいて東京五輪の開催に邁進(まいしん)する一方、救える命を救うための準備を怠ってきた政府と都の責任は、厳しく批判されなければならない。態勢の立て直し、なかでもホテルなどを使った宿泊療養の拡充・強化が急がれる。
1都3県では「調整中」を含めて自宅にとどまる感染者が約6万人にのぼる。都は宿泊療養のため6千室を確保しているというが、受け入れ可能数は半分しかなく、実際に利用できているのはさらに少ない1800人だ。なぜこれほどの落差が生まれ、どうやってこれを埋めていくのか、丁寧に説明すべきだ。
無症状や軽症の人は宿泊療養が原則だ。ところが政府が先週唐突に示した方針は、患者が急増する地域では、入院の必要がなければ「自宅療養を基本」にするとした。家庭内感染の恐れなどがある場合は宿泊療養を活用すると書かれてはいるが、多くが自宅にいる現状を追認することにならないか。
感染力の強いデルタ株によって、例示されている家庭内感染も相次ぐ。小さな子がいて家を離れるのが難しいケースなどを除き、一人暮らしの人を含め、医療従事者が常駐する宿泊施設での療養の方が望ましい。病状の急変に対応できるし、入院患者を対象に実施されている抗体カクテル療法も、こうした施設をうまく活用すれば、安全かつ効率的に行える可能性がある。
宿泊療養の強化に力を入れる自治体の動きもある。
春先の第4波の際、入院できずに自宅で死亡する感染者が相次いだ大阪府は、当時の反省を踏まえ、宿泊療養を原則とする方針を維持する。府内の宿泊療養者数は都内よりも多い2500人で、現在確保している4千室をさらに6千室まで増やす予定だという。
全ての感染者を病院もしくは療養施設で受け入れている福井県は、体育館を100床分の臨時医療施設として利用できるよう準備を整えた。想定するのは軽症者で、医師と看護師が常駐し、緊急時には酸素投与も行える。他の自治体も参考にして、それぞれの地域の医療資源を上手に活用してほしい。
専門家でつくる政府の分科会も、災害時と同様の危機ととらえて医療体制の強化を求めるとともに、人の流れを東京などで半減させる対策を提言した。感染防止に対する一人ひとりの意識をこれまで以上に高め、行動につなげなければならない。
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