安倍前政権下の「桜を見る会」の前夜祭の費用を安倍氏側が補填(ほてん)していた問題で、検察審査会が、安倍前首相の不起訴の一部を「不当」と議決した。

 東京地検特捜部は、一般市民の代表が下した判断を重く受け止め、徹底した再捜査を行わねばならない。いまだに説明責任を果たしていない安倍氏には改めて、さまざまな疑念に自ら進んで答えるよう強く求める。

 不起訴不当とされたのは、補填が選挙区内での違法な寄付にあたるとする公職選挙法違反と、収支報告書への不記載に関連して、会計責任者の選任監督責任を怠ったとする政治資金規正法違反の二つの容疑だ。

 検察は安倍氏本人や秘書らからは任意の事情聴取にとどめ、事務所の捜索といった強制捜査は行わなかった。議決は「供述だけでなく、メール等の客観的資料も入手」して判断すべきだったなどとして、十分な捜査が尽くされたとは言い難いとした。厳しい指摘である。再捜査では万全を期さねばならない。

 安倍氏は一貫して補填を否定していたが、検察の捜査で裏付けられ、昨年末に秘書らが政治資金規正法違反(不記載)の罪で略式起訴されると、自分は知らなかったと釈明した。議決は、首相まで務めた政治家の、秘書がやったことで自分は関知しないという姿勢は「国民感情として納得できない」として、「説明責任を果たすべきである」と注文をつけた。

 まさに、一般市民の多くが思うところだろう。しかし、安倍氏には通じないようだ。不起訴は「厳正な捜査」の結果だとしたうえで、再捜査の行方については「静かに見守りたい」と述べただけだった。

 桜を見る会をめぐる問題は、前夜祭だけではない。そもそも、税金で賄われる内閣の公的な行事に、各界の「功績・功労」に関係なく、時の首相が後援会関係者を大勢招待すること自体、私物化というほかない。招待者名簿の不透明な廃棄など、ずさんな公文書管理や、疑惑に答えない説明責任の軽視など、長期政権のうみが凝縮されているといっていい。

 前夜祭をめぐる安倍氏の国会での「虚偽答弁」は118回にのぼった。立法府の行政に対するチェック機能を掘り崩す深刻な事態だ。ところが、安倍氏は昨年末、自身の不起訴を受けて国会で通り一遍の弁明をしただけで、野党が求めるホテルの明細書や領収書などの資料提出にも一切応じていない。

 やはり、ウソをつけば偽証罪に問われる証人喚問で安倍氏に真相をただすしかあるまい。政治への信頼回復のため、与党は閉会中審査に応じるべきだ。